高度プロフェッショナル制度(高プロ制)の創設を含む「働き方」法が6月29日、参議院本会議で可決・成立した。審議のヤマ場となった同26日の厚生労働委員会で安倍首相は、これまで明らかになった問題点に全く答えず、手元の原稿を読み続けた。議論の積み重ねを無視する姿勢に野党議員は「棒読みするな」「虚偽はやめて」と批判した。
●経済界の要望?
立憲民主党の石橋通宏議員は「(高プロ制が)働く者の自由になる、やりがいがある働き方だと誰が言ったのか」と質問した。首相は、財界代表が中心の産業競争力会議の議論が発端だったことを認めつつ、「働く方のご意見を十分に伺いながら進めてきた」と強弁。「本制度は望まない方へ適用されることはないため(望まない人への)影響はない。企業が多く望んでいるからではなく、多様で柔軟な働き方の選択肢として整備するもの」と、これまでと同じ内容答弁を繰り返した。
●成果で評価?
社民党の福島瑞穂議員は「法案条文には高プロ制が成果に基づく働き方とは書かれていないことを、厚生労働委員会で確認している。高プロ制は自由で柔軟な働き方ではない。誤解を与えるような説明の仕方は間違っている」と首相を追及し、「(成果で評価するなら)高プロ制になれば労働時間短縮になるのか」と質問した。
首相は「高プロ制の目的は、労働時間を画一的な枠にはめる従来の発想を乗り越えて、創造性を発揮するため」「時短を目的とするものではなくて、いわばさまざまな働き方を可能にする選択肢を提供するために提出させていただいた。自らの創造性を発揮できるようにするもの」と、棒読みを続けた。
●過労死遺族と会わず
首相は「全国過労死を考える家族の会」が求めた面会を拒み続けてきた。国民民主党の浜口誠議員は「首相は『今国会は働き方国会』だと所信表明でも述べた。過労死遺族の真摯(しんし)な思いを受け止めるのは当然なのに、なぜ会わないのか。これはハートの問題だ」と批判した。
首相は「法案を熟知している厚生労働大臣が対応するのが妥当。面会要請は担当する役所や大臣から家族の会のご要望に応えていく」と述べた。衆院厚労委員会での答弁と全く同じ内容だった。
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