この間の参院厚生労働委員会では、労働時間規制を外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制)をめぐり、多くの欠陥・疑問が明らかになった。
●対象範囲は広がる
高プロ制の対象になるのは「年収1075万円以上の高度な専門職」とされる。しかし、具体的にどの職種が専門職に当たるのかは定かではない。政府は「今後労政審で議論した後、省令で決める」というばかりだった。
加藤勝信厚生労働大臣らは、適用対象者について「企業と交渉力のある、年収が高く高度な専門職」と繰り返したが、6月12日には「制度上は経験のない新卒でも対象になり得る(禁止されていない)」ことが明らかになった。
●通勤手当も「年収」?
政府は年収要件について、「1075万円以上を想定する」と言ってきたが、この年収には通勤手当や一時金なども含まれることが分かった。通勤手当が多い労働者の場合は、1075万円よりも低い水準でも適用が可能になる。
立憲民主党の石橋通宏議員は、1075万円から各種手当を引いた基本給は700万円以下になるという独自の試算を示し、同様の試算を行っているかを質問。厚労省はコメントを避けた。
●「成果で評価」はうそ
政府は高プロ制について「成果によって評価される働き方」と説明してきたが、法案には成果で評価する仕組みは明記されていないことが繰り返し指摘された。
石橋議員が「労働者が2倍の成果を上げたとしても、(法案には)それを処遇に反映させる仕組みはないということか?」と尋ねると、厚労省は「評価の仕方は労使の話し合いで決めるもの」と述べ、否定しなかった。成果で判断するかどうかは事実上企業側に丸投げということだ。
●詳細不明が約90項目
高プロ制の対象業務や年収要件の詳細は省令事項とされており、野党は「法案を白紙委任しろということか」と強く批判した。
公明党議員が「働き方改革法案には省令で定める事項はいくつあるのか」と質問したところ、厚労省は「約60項目」と答えた。内閣が定める政令を含めると、約90項目になるという。
●労働者のニーズなし
厚労省による高プロ制創設のニーズ調査は、対象者がわずか12人だった。しかも法案提出前のヒアリングはたった1人。
労働者のニーズがあるのかは極めて怪しい。加えて、企業側も創設を待望しているとはいえない。参考人質疑では経営コンサルタント会社「ワーク・ライフバランス」の小室淑恵社長が「高プロ制はマネジメントが難しく、導入したい企業はほとんどない」と述べた。
●過労死への歯止めなし
高プロ制は裁量労働制と違って、企業が業務指示を行うことを禁止していないため、連日24時間の連続勤務を命じることも違法ではないとされた。
高プロ制適用に当たっては、複数の「健康確保措置」から一つ選んで実施すればいいことになっている。その一つである勤務間インターバル制度は、長時間勤務への歯止めになるとして一定期待されている。厚労省は「現状の導入企業は1・4%に満たないことからインターバル制度の義務化は時期尚早」と答弁。過労死防止に消極的な姿勢を取り続けた。
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