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    〈プレカリ専従日記〉安すぎる賃金を改善したい/不払い残業と闘う警備員4人

     労働させておいて、対価である賃金、特に残業代を払わないブラック企業が後を絶たない。にもかかわらず政府は、高度プロフェッショナル制度という、長時間労働をさせても残業代を支払わなくする制度を導入し、不払い残業を合法化させようとしている。

     

    ●イオン系の会社を提訴

     

     6月21日には、イオングループの警備会社、イオンディライトセキュリティ株式会社に対し、同社群馬高崎警備隊所属のプレカリアートユニオン組合員4人が、仮眠・休憩時間が実態は労働時間であったことなどによって生じた未払い残業代約1491万円(付加金別)を請求して提訴した。原告組合員はショッピングセンターの警備に従事している。

      同社は、24時間勤務中、実際には労働から解放されない合計7~8時間の仮眠時間と休憩を設け、この仮眠・休憩時間について、賃金を支払っていなかった。

      原告で入社10年の関正哉さん(64歳)は、今回の提訴と同じ請求について、昨年5月に千葉地裁で原告勝利の判決が出て、会社も判決を受け入れたことを紹介。千葉地裁判決は、休憩時間の実態が待機時間であること、仮眠時間中も緊急事態には起きて対応することが求められていたので労働時間であること、警備員が装備を身に着けるための着替えの時間も労働時間であることを認めている。

     関さんは「しかし会社は、昼間の休憩時間については(賃金の)支払いをせず、仮眠時間には1回2千円という慰労金を払って済ませようとした。このような払い方で済ませようとするのか、理由が分からない。警備業界の賃金は安すぎる。手取り15万円程度では結婚もできない。警備員の待遇も改善していきたい」と提訴に至る経緯を語る。

     

    ●過労死ライン超える

     

     入社14年の剱持誠さん(69歳)は「入社時に会社からは、警備業務は24時間拘束だと言われた。それは24時間勤務ということ。店内の巡回や出入管理を担当し、1人は防災センターで出入管理と機器の確認、もう1人が巡回をしている。店内に血を流している人がいるのに、私は休憩中だからといって対応しないことなどできない。休憩時間と呼ばれていても、実態は待機時間だ」と語る。

     今回提訴した裁判も、原告が勝利することはほぼ確実。しかし、会社は未払い残業代の支払いを拒んだ。会社が未払いを認めてしまうと、過労死ラインを超える残業をさせているのを認めたことになるからではないか、という想像も成り立つ。

     関さんはさらに、「企業内組合の役員から、休憩時間については最高裁まで争います、と言われた」と発言。剱持さんも「プレカリアートユニオンに移ったときに、企業内組合の役員がやってきて、裁判を起こしても損だ、残業代と同額のペナルティーの付加金は付かないと言った。それは会社が言うことであって、労働組合が言うことではない。組合は組合員のために活動するところで、会社の代弁をするところではない」と憤る。

     

    ●高プロ制で闘い困難に

     

     今も残業代の不払いや労災隠しが横行している。しかし、適切に争えば、ほぼ労働者側が勝つ。一方で、高プロ制が導入されれば、争うことすらできなくなる。長時間労働をさせた会社の責任を問うことも難しくなる。違いは大きい。(プレカリアートユニオン委員長 清水直子)