金属製造業の労組でつくる金属労協は6月21日、2018春闘の中間まとめを確認した。トヨタが賃上げ回答を非公表としたことを問題視する内容となっている。高倉明議長(自動車総連会長)は「非常に大きな問題。こんなことは二度とあってはならない」と述べ、企業や業界団体への働き掛けを強めるなど、当該組合への支援を強める考えを示した。
全体の回答状況については、賃上げの裾野が広がったこと、ベアなどの賃上げ額で中小が2年連続で大手を上回ったことを評価。一方、賃上げに対する経営側の抵抗感が強まっているとも指摘している。
●大手の責任に言及
18春闘では、相場形成に影響力を持つトヨタの経営側が、集中回答日に「一般組合員の賃金改善分は昨年を上回る」との表現で、回答額を非公表とした。その後、「手当などを含め平均1万1300円、3・3%の昇給」という内容が明らかになったが、賃上げ分は明示していない。
中間まとめはこの問題について、「賃上げの相場形成と波及を果たすことは労使の社会的責任」と指摘。「産別交渉で直接的な賃金決定を行わないわが国では、社会的相場形成の中で大手の賃上げ額がマクロレベルの成果配分の重要なものさしとなっている」と述べ、大手の責任に言及している。
高倉議長はトヨタに限った話ではないと前置きした上で「来年も続くとすれば非常に大きな問題。大手企業には社会的責務がある」と強調した。来年も繰り返されないよう、上部団体として当該労組への支援を行っていく考えを示した。
●生産性三原則の共有を
5月段階で、賃上げを獲得した1668組合のベアや賃金改善など賃上げ額の平均は1505円。300人未満の中小が1563円で、千人以上の大手の1496円を上回っている。
中間まとめは、中小の賃上げ獲得組合の割合が例年の5割程度から今年は6割を超えた点に着目、「賃上げの裾野が大きく広がった」と評価する。賃上げ額も2年連続で大手を上回った。その要因について(1)人材流出防止の必要性(2)賃金水準を意識した格差是正の取り組みの推進(3)付加価値の適正循環を求める運動の浸透(4)中小の賃上げが大手を上回ることへの経営側の働きかけ――を挙げた。
一方、賃上げに対する経営側の抵抗感は従来以上に強くなっているという。中小では4割が賃上げを獲得できていない点を指摘し「賃上げが定着したとまでは判断できない」とした。
今後、労使による生産性三原則(雇用の維持・拡大、労使協議、公正成果配分)の共有化を呼びかけている。
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