雇用の安定、労働条件の維持・向上、ハラスメントのない職場づくり――いずれも労働行政がめざすべき重要テーマだが、その足元では逆の事態が進行している。労働行政の諸分野で専門的な業務を担っている非常勤職員の雇用や処遇がないがしろにされ続けているのだ。6月14、15の両日、全労働に加入する非常勤職員(特別組合員)が全国集会を開き、職場の実態を告発し、改善を訴えた。
●専門職の誇り奪うな/行政の質が危うい
「目の前で泣いている求職者がいるのに『今日はもう終わり』とは言えません。心を病んでしまった人が泣きやんで話し始めるまでには時間がかかります」
こう語ったのは、学生など若者の就職を支援している非常勤職員だ。人員が減らされた上、業務量は増加。一方で労働時間は1日6時間30分へ1時間短縮となったため、窓口は「人手不足」状態が続いている。
学生支援の仕事は窓口対応だけではない。学校を訪問して行うガイダンスや、就職後の定着を援助する業務、求人を開拓する任務もある。集会では「人員が減らされて、定着支援に出かけられなくなりました」「ガイダンスの資料を作成する時間がなく、自宅に持ち帰ってやっています。窓口で相談を受ける余裕が全くありません。就職が難しい子の相談にはじっくり対応してあげたいけれど、とても無理」などの声が上がった。
●件数主義の弊害
公共職業安定所として行うべき行政サービスの質が低下していることへの無念さも共通して指摘された。
この傾向に拍車をかけているのが、最近職場で強まってきた件数主義の影響だ。紹介件数や就職件数などの目標が示され、達成に向けてあおり立てる職場が少なくないという。
40代の非常勤職員は、上司から「件数を上げることを優先して」「1人当たり15分で相談を」などと指示されたことを紹介し、こう憤った。
「15分で相談なんて、私は紹介状の発券機ではありません。そんな仕事なら人工知能(AI)でもできます。結局、就職困難な弱者は置いてきぼりになり、すぐに仕事が決まりそうな求職者の取り合いになってしまう。件数主義は行政サービスの低下を招くだけ。管理者はそのことをもっと自覚すべきです」
●雇用不安招く公募
7年前から始まった公募制度も、専門職としての誇りを傷つけ続けている。
3年ごとにいったん雇い止めして、一般求職者と一緒に応募させる仕組み。経験と知識がありながら、ふるいにかけられる。雇用が継続できるかどうか、合否の基準があいまいなだけに、常に不安がつきまとう。
ベテランの非常勤職員は、公募制度をやめようとしない人事院の姿勢を批判し、こう訴えた。
「民間企業に対しては正社員化や無期雇用化を指導する立場なのに、なぜ自分たちは3年で入れ替えの恐怖にさらされなければならないのでしょうか。不公平だし、矛盾を感じます。資格を取って一生懸命に働いても、首筋にギロチンを当てられているような恐さがあります。これがパワハラでなくてなんなのでしょう。労働問題のプロである厚労省は、人事院に対して『こんなものはやめるべきだ』と指導すべきです」
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