日本医労連(森田しのぶ委員長)が看護師と介護職について、それぞれ全国適用の特定最低賃金を設定する運動に取り組んでいる。5月には厚生労働省に新設を申し出た。地域間や他産業との格差を是正するため、都道府県別ではなく、全国一律の制度を目指しているのが特徴だ。
●公正競争にとって必要
医療は診療報酬、介護は介護報酬が設けられており、事業収入の大部分は公定価格で決まる。報酬額には地域差がなく、全国一律。人件費を抑制するほど、事業の利益が上がるという関係にある。
医労連によれば、賃金水準の低い九州や北海道の病院、介護施設などは都市部よりも利益率が高い。病院の場合、九州地方の利益率1・2%に対し、関東は0・5%。森田進書記長は「低く抑えた人件費によって生み出した利益をもとに、関東に進出して病院を買収。そこで病院グループ内の労働条件統一を理由に賃金を下げる現象が起きている。これは公正競争ではない」と語る。
医労連の実態調査では、看護師初任給では約9万円、パート時給で1550円もの地域間格差がある。看護師は賃金水準の高い地域へ流出し、看護師不足に拍車を掛けている。
低賃金を利用した不公正な競争を防止し、人手不足を解消するには全国一律の最賃が必要で、経営側にとってもメリットがある――と指摘している。
●世論高める運動が鍵
新設申し出を受け、厚生労働省の中央最低賃金審議会がその必要性の有無を判断する。全国適用の最賃新設は1989年の非金属鉱山(現在は廃止)以来、例がなく、審議には時間がかかると見られている。
医労連は、厚生労働大臣宛ての要請署名に取り組むほか、経営者団体を含めて同意書を集める。地方議会での意見書採択なども進め、世論を高める構えだ。
森田書記長は「組合の内外で全国一律最賃が必要という認識を広げる中で(かつて看護師確保法を制定させた)ナースウエーブのような運動も展望したい」と語っている。
〈写真〉最賃新設の申し出について記者会見する医労連役員(6月7日、都内で)
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