働き方改革関連法案の参院での審議が始まった。6月5日と7日の厚生労働委員会では、政府は労働時間規制を外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制)創設の必要性を明確にできなかった。
●対象者に裁量あるか?
政府は高プロ制の対象業務には「自己決定権や裁量がある」と説明してきた。この点で立憲民主党の石橋通宏議員は「過重な長時間労働が避けられないような納期を業務命令で出されたら、労働者に裁量はなくなる」と指摘。裁量がない状態で働くことになった場合、対象業務から外れるのかと質問した。
加藤勝信大臣は、そのようなケースは高プロ制にふさわしくないとしつつ、「今後省令で定める」と答えた。石橋議員は「法律(本体)に書き込まなければ意味がない」と返した。
●維新からも疑問の声
衆議院では法案に賛成していた維新の会も、高プロ制について疑問を呈した。東徹議員は「法案には長時間労働の是正(時間外労働の上限設定)も含まれているが、高プロ制は長時間労働を助長するともいわれている。方向性が全く違うのではないか」と質問。
山越敬一労働基準局長は「(長時間労働規制も高プロ制も)いずれも働き手の希望に応じた選択肢を増やすもの。趣旨は同じ」と答弁し、議場内に「ええーっ」と、驚きの声が上がった。東議員は「ちょっと納得がいかない」と食い下がったが、同局長は同じ答弁を繰り返すばかりだった。
●ヒアリングは不正?
政府は高プロ制に関するヒアリングで労働者からも賛成の意見があったと説明してきた。加藤大臣は1月31日の衆院質疑で「私の方で十数名からヒアリングした」と自ら聞き取りをしたように述べていた。
社民党の福島瑞穂議員は、ヒアリングの状況について質問。山越労働基準局長は「労働基準局の職員が日々の業務の中で聞き取りをしたもの」と明かした。対象になった12人のうち、3人は2015年、9人は今年2月1日に行っていたという。9人への聞き取りは高プロ制導入の必要性について加藤大臣が追及された翌日。中には会社の人事担当と同席して行われたケースがあったことも明らかになった。
福島議員は「(ヒアリングは)アリバイ作りのための茶番ではないか。こんなものを根拠とするのはおかしい」と述べ、高プロ制の撤回を迫った。
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