有期雇用労働者の不合理な格差を禁止する労契法20条の二つの最高裁判決を受け、裁判を支援してきた全日本建設運輸連帯労働組合は6月7日、都内で報告集会を開き、格差是正の運動を一層強化していこうと呼びかけた。
宮里邦雄弁護士が判決内容を解説した。最高裁判決は、労契法20条の立法趣旨、解釈、適用の判断枠組みを示したと分析。手当の性格や趣旨を個別に検討した上で、不合理か否かを判断する手法を確立したという。
ハマキョウレックス事件では高裁で認められなかった皆勤手当について、(1)皆勤奨励の趣旨(2)職務内容によって正社員との間に差異が生ずるものではない(3)将来の人材登用によって異なるとはいえない――と整理し、新たに不合理と認めた。
同じ判断枠組みを使用しながら、定年後再雇用の長澤運輸事件では精勤手当の不支給などが不合理とされ、その他の手当は退けられた。定年後再雇用は長期雇用を目的とせず、老齢厚生年金の受給予定であることを考慮したためだという。宮里弁護士は「定年後再雇用の賃金引き下げが一般的という文言は判決文にない」と指摘。判決から安易な格差肯定論を導き出すことはできないとし、別の職場では違う結論が出る可能性は十分あると述べた。
労契法20条が定年後再雇用者にも適用されることを強調。「判決を踏まえて、定年後再雇用を含む有期雇用労働者との格差を労働組合、使用者ともに総点検、精査する必要がある。格差是正と組合員化を同時に追求することが改めて労働組合に求められている」と呼び掛けた。
ハマキョウレックス事件原告の池田正彦さんは「最高裁では皆勤手当も勝ち取ったが、(正社員との格差是正は)7割程度にしか縮められなかった。格差はまだまだある。組合活動を今まで以上に頑張る」と決意を述べた。
長澤運輸事件原告の一人、鈴木三成さんは「大手企業と違い、入社3カ月も勤続30年も給料にさほど差がなく、低い。裁判ではもう少し細かく実態を見てほしかった」と語った。
小谷野毅書記長は長澤運輸の判決について「寸分違わず同じ仕事をし、真面目に現場で働いている再雇用労働者にとんでもない毒を盛った」と強く批判した。ハマキョウレックス判決については「トラック運転手の格差是正、均等待遇を求める運動でも極めて重要な意味がある」と評価。「会社は(処遇差の大きい)非正規労働者によって高成長した。多くの物流会社がその手法を真似している。判決を武器に率先して闘う」と訴えた。
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