労働時間、休日、深夜の規制をほぼ全て外す高度プロフェッショナル制(高プロ制)の創設を含む働き方改革関連法案が5月25日、衆院厚生労働委員会で強行採決されました。24日間・24時間連続労働も違法ではないことが明らかになるなど問題山積のまま、政府与党は数の力で押し切りました。本会議での採決を経て、今後舞台は参院へ移ります。欠陥だらけの高プロ制は法案から切り離すべきです。
「強行採決の中でも最悪の強行採決だ」。採決後、一人の野党議員がこう述べました。この日、法案の根拠とされた労働時間データにまた新たな不備が見つかり、その説明ができないまま、高鳥修一委員長の職権で強行採決したことを批判したものです。森友・加計学園疑惑、防衛省の日報隠し、財務省のセクハラ問題と、説明責任を果たさない政府与党の姿勢は、働き方法案の審議でも繰り返されました。
高プロ制をめぐっては、制度創設の根拠が極めて乏しいことが明らかになりました。法案が必要な理由を問われ、加藤勝信厚生労働相はわずか「十数人」の労働者から賛成意見を聞いたと答弁。法案を検討した労働政策審議会では、労働者委員が強く反対し、厚労相への答申に反対意見が付記されたのに、あまりに理不尽な言い分と言わざるを得ません。
法案では、休日を4週4日・年間104日を与え、健康診断を受けさせさえすれば、使用者は労働時間の規制を何も受けません。24日・24時間連続労働を命じることも理論上可能だとの野党の追及に、政府は「違法ではない」と認めざるを得ませんでした。
そのうえ、現行の裁量労働制とは異なり、出退勤、労働時間配分に関する裁量が法案に明記されていないことや、対象業務が明確ではなく、拡大解釈されて広がる恐れがあること、法改正せずに省令改正で対象業務を拡大できること――などの問題を孕(はら)んでいます。有期雇用労働者への適用も可能です。
過労で病気を発症したり亡くなったりしても、労働時間が把握されないため、労災認定が困難となり、本人や遺族が必要な補償を受けにくいという問題についても、政府は現行制度の説明に終始しました。「死人は増えても過労死(労災認定)は減る」という、過労死遺族の懸念は全くぬぐえないままです。
法案は問題山積です。高プロ制創設部分は、働き方法案から切り離し、裁量労働制の適用拡大と同様、労働政策審議会に差し戻して制度創設の是非から議論をし直すべきではなないでしょうか。
コメントをお書きください