「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    〈国会傍聴記〉史上最低の強行採決/「働き方」法案/過労死遺族の願い無視

     史上最低の強行採決だったのではないだろうか。

     5月25日の衆院厚生労働委員会。「茶番はやめろ」「人の命がかかってるんだよ」「恥を知れ」――働き方改革関連法案採決の最中、傍聴席からは次々と怒号が飛んだ。

     当日の朝明らかになった裁量労働制のデータ不備の調査も行われないままの採決。抗議する野党と、起立を繰り返す与党と維新などの議員が入り乱れる中、付帯決議が大声で読み上げられ、委員会室は騒然となった。遺影を抱いて委員会を傍聴していた過労死遺族らは硬直したまま、混乱する採決の様子を見つめていた。

     

    ●遺族の気持ち逆なで

     

     2日前の5月23日には、高度プロフェッショナル制度(高プロ制)削除を求める過労死遺族の思いを逆なでするような質疑が続いていた。

     国民民主党の柚木道義議員は15分しかない質問時間で、高プロ制の削除と、首相との面会を希望する過労死遺族の要請を受け入れるよう訴えた。しかし、安倍首相は「法案を熟知している加藤厚生労働大臣が対応する」と、繰り返し面会を拒否。それでも「10分でも5分でもいいから会ってください」と食い下がると、「柚木議員のお話を聞いておりますと、まるで高プロを導入すると、過労死が増えるかのごときのお話であるわけですが」と答弁。高プロ制の危険性について議論してきた経緯を無視する返答に議場は騒然となった。

     委員会終了後に首相官邸前で座り込みをした東京過労死を考える家族の会代表の中原のり子さんは「首相は冷たい」と一言。それでも「私たちはここで首相を待っています」と話したが、首相が遺族の元を訪れることはなかった。

     

    ●命の問題なのに…

     

     裁量労働制をめぐるデータのミスが再び見つかった25日の朝。立憲民主党の西村智奈美議員が求めた調査のやり直しを拒み、はぐらかし答弁を続ける加藤勝信厚労大臣に対し、野党は不信任決議を突き付けた。本会議で同議員は「採決を立ち止まるのは今だ」と2時間にわたる演説も行った。

     午後の厚労委では、国民民主党の岡本充功議員が「正しいデータを教えてもらわないと採択はできない」と再調査のため、審議をいったん中断するよう求めた。厚労省の政務官が答弁に立とうとした瞬間、高鳥修一厚労委員長は「質問時間は終了した」と、一方的に質疑打ち切りを宣言。野党議員が委員長席に詰め寄って抗議する中、採決が強行されたのだ。

     委員会終了後、全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表世話人は「命の問題なのに、あんなやり方ってありますか」「総理との面談も断られ、過労死家族をなんだと思っているのかと言いたい。こんな暴挙を許してはいけない。私たちは決して諦めない」と語った。(記者 長谷川久美)

     

    〈写真〉家族の会の寺西代表世話人(右)は「参院に審議が移っても安倍首相に面会を求めていく」と話した