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    沖縄レポート/当事者意識の持ちにくさ/日本ペンクラブの集いを聞いて

     5月20日の沖縄はにぎやかな日だった。

     宜野湾市では日本ペンクラブの「平和の日」の集いが開かれた。沖縄で初めて開催され、「文学の力」をキーワードに日本の現状や沖縄の問題について語り合った。ハンセン病市民学会の総会・交流集会や、琉球民族独立総合研究学会のシンポも行われた。

     

    ●気になる菅氏の来沖

     

     こうした人権問題、不正義を直視しようというイベントをよそに、19日から菅義偉官房長官が沖縄入りしていた。宜野湾市と浦添市にある米軍基地の一部約3・4ヘクタールが返還されたことを記念する式典・祝賀会が20日、那覇市のホテルで開かれ、そこへの出席が表向きの目的だ。

     菅氏は、辺野古新基地問題を抱える名護市や周辺市町村長、経済関係者と懇談。教員採用への口利き疑惑で辞任した安慶田光男前副知事らとも会っている。安慶田氏は翁長雄志知事の腹心として政府との折衝に当たっていた人物だけに、県政関係者にとって気になる動きだ。年末の知事選に向けた態勢づくりのために、あえてこの時期に式典を開いたのではないかとみる向きもある。

     

    ●基地問題と文学

     

     さて、日本ペンクラブの集いである。登壇者は浅田次郎前会長、吉岡忍会長のほか落合恵子(作家)、ドリアン助川(詩人・作家)、川村湊(文芸評論家)、金平茂紀(ジャーナリスト)の各氏と、地元から又吉栄喜(作家)、大城貞俊(作家)、八重洋一郎(詩人)の各氏。

     沖縄出身者、在住者によって沖縄をテーマに描かれる「沖縄文学」は、高い倫理性と抵抗の意思を湛(たた)えつつ、独特のユーモアがあるといった特徴が指摘され、言語的な実験も含めて「日本文学」を揺らし続ける存在であることが確認された。登壇者の多くが「沖縄文学は世界性を持つ世界文学」だと強調した。

     シンポの影の主役は、登壇しなかった沖縄在住の作家、目取真俊氏だったかもしれない。「文学に何ができるのか」が議論される中で、基地反対闘争の現場で体を張ることが作品を書くより重要だという目取真さんについて何度も言及された。ただ、沖縄の状況に対するヤマト(日本)の側の立場性、発言者自身の立ち位置に踏み込む議論にはなりにくかった。

     沖縄への基地押し付け政策が継続していることに、「日本人」としての当事者意識が問われているのに、そこまでの言及は不十分で、予定調和的結論にとどまった。沖縄の基地問題について本土側から発言することはいかに重いことかと、シンポを聞きながらあらためて考えさせられた。(ジャーナリスト 米倉外昭)