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    「高プロ制に断固反対」/労働弁護団が緊急集会

     日本労働弁護団は5月19日、高度プロフェッショナル制度(高プロ制)を含む働き方改革一括法案の強行採決に反対する緊急集会を議員会館前で開き、約千人が参加した。

     過労死遺族や労組代表が発言。高プロ制で労働時間規制を適用除外することの危険性を訴えた。参加者は「高プロ反対」「過労死なくせ」のプラカードを掲げ、真剣な表情で耳を傾けた。

     

    ●働く者の苦しみを知れ/鈴木剛全国ユニオン会長

     

     あるバス運転手は、休日出勤や若い後輩たちの仕事をカバーするために無理をして働き、既に一度倒れたが、再び脳内出血を起こし、職場で倒れた。(残業時間が)過労死ラインには届かず、労災認定は通らないかもしれない。労災に遭っても救済されない実態はたくさんある。

     労働組合は働く人のための組織。市民のみなさんと連帯して労働を変えなければならない。将来働く子どもたちのために、誰もが安心して働ける社会を作ることが必要だ。働く人の苦しみや悲しみを知らない安倍政権に、実態を突き付けよう。

     

    ●高プロ制は欠陥法案/伊藤圭一全労連雇用・労働法制局長

     

     安倍政権下で労働法制は大変な方向へ進んでいる。労働者を保護する労基法はなくてもいいぐらいに思っている。その象徴が高プロ制。使用者との交渉力の保障もなく、労働時間規制、労働者保護を外し、労働者への業務の指揮命令ができる現代の奴隷制だ。

     国会の審議では、命令された時間通りに働けなければ、欠勤控除や賃金カットをしても違法ではないということが分かった。年収要件1075万円以上は目くらましということ。人の命を収奪してもうけるブラック企業の経営者はいっぱいいる。悪用を禁止・防止できないのでは、欠陥法案だ。

     

    ●過労死は人災/東京過労死を考える家族の会 渡辺しのぶさん

     

     10年以上前にエンジニアの夫を亡くしました。会社から「裁量労働制だから過労死じゃない」と言われて初めて、夫が裁量労働制だったと知りました。そういう逃げ道を会社に用意するのが、安倍首相が通そうとしている法案です。

     過労死の発生した職場には過労死寸前の人たちが何人もいます。目の前で同僚が亡くなっても会社は何もしないばかりか、過労死を本人のせいにする。心理的ショックはすごいものです。もし、(長時間労働を是正しようと)声を上げてクビになったら、家庭や幼い子どもを犠牲にしなければならず、日々耐えるしかないのです。

     私たちは過労死を経験し、そのつらさを知っている日本で唯一の団体です。安倍首相に面会を申し入れていますが、返事はまだありません。面会の前にこの法案を通してはいけないのです。

     過労死等防止対策推進法が施行され、日本中から過労死をなくす機運が高まったのに、どうして逆行するのでしょうか。過労死は人災です。裁量労働制や高プロ制がまかり通る社会に子どもを送り出せない。私たちは高プロ制に断固反対します。

     

    〈写真〉東京過労死を考える会の渡辺しのぶさんは「過労死は人災」と述べ、高プロ制阻止を訴えた(5月19日、国会前)