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    なんとしても高プロ制撤回を/過労死家族の会が訴え/安倍首相には面会申し入れ

     働き方改革関連法案が、5月23日の衆議院厚生労働委員会で強行採決されるのではないかとの観測が強まっている。過労死を考える家族の会と日本労働弁護団、過労死弁護団は同16日に会見を開き、高度プロフェッショナル制度(高プロ制)導入に反対する緊急共同声明を発表した。

     日本労働弁護団の棗一郎幹事長は「高プロ制は世界共通のルールである1日8時間労働などの時間規制に大きな風穴を開け、労働者を危険にさらし、取り返しのつかないことになる」と強調。法案からの削除と強行採決反対を訴えた。

     過労死弁護団の玉木一成事務局長は、過労死の一番の原因は長時間労働であり、労災認定や裁判で最も困難なのは労働時間の証明だと述べ、「(高プロ制で)労働時間の規制、管理、把握から外される労働者を作ることは、過労死を増やす。事業主が免罪される」と批判した。

     全国過労死を考える家族の会の代表、寺西笑子さんは同日、安倍首相に面談を申し入れたことを報告し、「(強行採決が見込まれる前日の)22日までに面談していただきたい。長時間労働で大切な家族を失った思い、職場や仕組みの実情を知っていただき、これ以上死人を、悲しむ遺族を作らないでくださいと直接お願いしたい」と語った。

     働き方改革について「私たちの思いとは全く反対の方向に進んでいる。定額働かせ放題で過労死しても責任を問えない制度ができれば、確実に過労死が増える」と強調した。

     NHK記者の娘を過労死で亡くした佐戸恵美子さんは、家族の会のメンバーが黒い服で会見に臨んだことを記者から尋ねられ、「亡くなった娘の無念の気持ちです。残された家族の悲しみです」と答えた。

     佐戸さんは、高プロ制が将来、年収要件を引き下げられ、一般職にまで裾野を広げられる恐れがあると指摘。「成果主義で労働者に仕事を押し付ければ、まじめで責任感の強い人ほど頑張ってしまう。娘のような過労死を生む結果になる」と語気を強めた。

     

    〈写真〉寺西さん(前列中央)は「過労死の悲劇を防いでいきたい」と訴えた(5月16日、都内で)