カジノ設置を柱とする統合型リゾート(IR)実施法案が4月下旬に閣議決定された。カジノで世界から観光客を誘致しようという狙いだ。ギャンブル依存症を防ぐため「入場料6千円を徴収」「週3回、月10回に入場を制限」といった規制も盛り込まれている。だが、日本はすでにパチンコ・パチスロや競馬・競輪など世界一のギャンブル大国。ギャンブル依存症に苦しむ人も多い。その理解や対策が進まないままのカジノ解禁で大丈夫なのか。
〈カジノとギャンブル依存症〉(1)ギャンブル依存は病気です
「意思が弱いから」「自業自得・自己責任」――ギャンブルにはまり、借金を重ねてしまうような人々への世間の目は冷やかだ。だが、ギャンブル依存症は、世界保健機関(WHO)も認めるれっきとした病気。自己抑制が効かないコントロール障害といわれる。
昨年の厚生労働省の調査では、過去にギャンブル依存症が疑われる状態になったことがある人は3・6%。日本全体で320万人とも推計されている。糖尿病患者数316万人(2016年)に匹敵する。
この温床になっているのが全国に1万店以上もあるパチンコ・パチスロ店の存在だ。公益社団法人の「ギャンブル依存症問題を考える会」がギャンブル依存症患者を対象に実施した調査では、「はまっていたギャンブル」として90%以上の人がパチンコ・パチスロと回答している。
Tさん(30歳男性)も、きっかけは20歳の頃始めたパチンコだった。就職後、本格的にのめり込み、消費者金融から借金。親の財布から金を抜き、家にあった宝石類も売って、パチンコに通い続けた。「どうしてもやめられない。死ぬしかないと思っていた」
誰もがTさんのような状態に陥る危険がある。ギャンブル依存症を考える会の田中紀子代表は自らも依存症だった経験を踏まえ、「ギャンブル依存症は、脳内で意欲や快感などに関わるドーパミンという物質が過剰反応し、自己抑制が効かなくなる病。誰がそこに転んでしまうかは、本当に分からない」と指摘する。
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