神奈川労働弁護団は4月19日、働き方改革関連法案の危険性を訴える集会を横浜市内で開き、約100人が参加した。集会には過労死遺族や最賃運動グループのエキタス(AEQUITAS)らが登壇。労働現場の厳しい実態を報告した。
総合サポートユニオンは昨年秋に裁量労働制ユニオンを立ち上げたところ、約50件の相談が寄せられ、団体交渉などに取り組んでいる。代表の坂倉昇平さんは編集者とゲームクリエーターの事例を紹介。2人とも長時間労働の末、適応障害を患ったという。坂倉さんは「労基署に相談して解決できず、ユニオンに来ている。労基署が裁量労働制適用の働き方かどうかを調べるのは難しい。現場の労働者が立ち上がり、自ら声を上げるしか闘いようがない」と述べた。
商業施設の装飾会社、グリーンディスプレイで働いていた長男を過労による通勤事故で亡くした渡辺淳子さんは「法案の時間外労働上限100時間未満は不十分」と批判。「労働者の命を守ることが大前提。勤務間インターバルの方が抜本的な解決になる。限界を試すような働き方は生産性向上と真逆。過労死のない社会の実現が未来への責任」と訴えた。
日本労働弁護団の棗一郎幹事長は法案について、「裁量労働制の適用拡大は来年以降に先送りされただけで、政府は諦めていない。高度プロフェッショナル制度とともに完全に断念させよう」と呼び掛けた。
●労働局、更新上限を指導
有期契約労働者が同一の使用者と通算5年を超えて契約を更新した場合に発生する、無期転換権をめぐる事件も報告された。
一般財団法人消防試験研究センターで働く女性(51)は2013年4月から1年更新で非常勤職員の契約を結んでいた。法人は16年1月、非常勤職員が無期雇用に移行しないよう、雇用は1年契約で更新3回までと通達。上限を超える職員は16年の年度末までに雇用を終了するよう指示した。
女性は同年7月に雇い止め予告を受け、神奈川自治労連公務公共一般に加入し、4回の団体交渉を重ねた。その後、東京労働局には解決援助を申請、神奈川県労働委員会には不当労働行為救済申し立てを行った。労働局が指導文書を交付すると、法人は労働委員会で雇い止め予告を撤回し、契約更新に応じた。女性は今年4月に無期転換権を行使した。別の非常勤職員は昨年4月から無期転換が認められているという。
報告した井上啓弁護士は「指導文書は更新上限やクーリング期間を提案したことが労契法18条2項の乱用だと指摘している。こうした(法の網をくぐる)潜脱は立法趣旨に反すると訴えなければならない」と語った。
〈写真〉ブラック企業対策プロジェクト制作のチェックシートが配布された
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