「命に関わらないから」と歯科受診が後回しにされた結果、「口腔(こうくう)崩壊」といわれる深刻な事態に陥る事例が幅広い年代層に広がっている。全日本民医連歯科部が4月18日に発表した歯科酷書第3弾で明らかになった。民医連の岩下明夫歯科部長は「経済的格差や貧困が口腔崩壊を生んでいる。自己責任論では済まされない」と分析している。
酷書で報告されたのは、虫歯の進行で食事にも支障をきたすようなケースだ。建設業の40代男性は、不規則な労働時間から受診を中断。上の歯がほぼ崩壊してしまった。母親の介護と経済的困難から受診できなかった60代女性は、奥歯が無くなり、そしゃくが困難になってしまった。
「交通手段のない高齢者や生活保護以下の水準で暮らす低年金者、長時間労働の労働者らが医療から遠ざけられている」と岩下部長は指摘する。
厚労省調査では、子どもの虫歯は年々減少しているが、酷書には口腔崩壊の事例が紹介されている。幼少期から歯磨き習慣がなく、経済的理由から通院もできなかった女子高校生は、28本中17本が虫歯になり、歯の形が崩壊。スポーツドリンクを常飲していた男子高校生は虫歯が悪化し、部分入れ歯になった。
巨摩(こま)共立歯科診療所(山梨県)の榊原啓太所長は「歯磨き習慣や食事時間などは家庭環境によって影響を受ける。磨き方が下手な子どももいる。虫歯予防や悪化を防ぐには、定期的な歯科検診が必要だ」と話している。
コメントをお書きください