ウーバーが欧州司法裁判所で再び敗訴した。欧州連合(EU)の最高裁にあたる同裁判所は4月10日、「情報会社だ」という同社の主張を退け、ライドシェアを規制したフランスの新法は有効だと判決した。
パリに進出したのは、2011年12月。素人運転手が自家用車で客を運ぶウーバーポップを広め、3年後のピーク時には運転手25万人が登録していた。
だが、法律を無視するその経営姿勢を、仏大統領や内務大臣が「違法」「傲慢(ごうまん)」と批判。タクシー運転手は、収入が3~4割落ちたと、実力行使で激しい反対運動を展開した。
14年10月には、未登録のタクシー運転手と客とのアプリ交信を禁止する法律が制定され、違反した者を最高2年の実刑に処することを認めた。
これに対してウーバーは、新法は無視してよいと運転手に通達し、罰金を肩代わりした。その結果、同社のパリ事務所が家宅捜索を受け、幹部2人が逮捕・起訴されるに至った。
●やっぱり運輸業
第一審は、2人に執行猶予付きの有罪判決を言い渡し、会社に80万ユーロ(約1億600万円)の罰金を命じた。これを不服として控訴したウーバーは、同社が「情報社会の事業者」であると主張。フランスの新法は、デジタルサービスの法律であり、EU法に従って施行前に欧州委員会の承認を得る手続きを怠ったから、有罪判決は無効だと訴えた。このため、フランスの裁判所が欧州司法裁判所に判断を委ねた。
欧州司法裁判所は、「ウーバーは運輸業」という昨年12月の判決などに基づき、ウーバーの訴えを退けた。判決は、控訴できない。根強い反対運動でフランスのウーバーポップは、15年夏以降は休止状態だ。一部の国を除くEU全域に共通する傾向である。残る旅客サービスは、ハイヤーの営業許可を持つウーバーエックスのみだ。
●デンマークから撤退
そのウーバーエックスが今週、アテネから撤退した。ギリシャでは配車アプリに対する規制強化が進み、有資格のハイヤーやタクシー運転手が、レンタカー会社や観光業者に雇用されて営業することが義務付けられている。さらに今後は、車両を営業所から出庫することなどが求められる。アプリと顧客のデジタル登録も必要となる。こうした制約を受け、ウーバーは営業中断を決めた。
デンマークでも反対運動や規制強化を受けて昨春に全面撤退した。税務局が14年からの2年間で元運転手1195人中1192人が脱税していたと、計186万ドル(約2億円)の追徴金を課すと発表している。(国際運輸労連内陸運輸部会長 浦田誠)
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