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    本/沖縄の視点で条文を解説/『21世紀版 わたしの憲法手帳』

     日本国憲法を、沖縄の歴史と現実に則して解説した好著。米国施政下から日本に復帰した1972年にポケット版が発行され、88年に21世紀版、2015年にその5版(追補版)が出されている。

     発行したのは憲法を定着させることを目的に、復帰直前に設立された沖縄県憲法普及協議会。本土復帰運動は、平和主義と国民主権、基本的人権を定めた憲法の下で暮らしたいという思いで取り組まれた。ところが復帰後、「憲法の形がい化の実態を、直接に見せつけられたのが、沖縄県民である」(ポケット版序文、平良良松那覇市長)と、厳しい実態に直面した。

     沖縄に米軍は駐留し続け、新たに「反憲法体制の象徴ともいうべき」(同書)自衛隊が配備されたのである。そして今なお、日米両政府によって個人の尊厳や平和的生存権が脅かされている現実が続く。

     だからこそ同協議会は「憲法の命をよみがえらせなければならない」と決意。本土を含めた憲法形骸化の実態を発信し、現状を変えていくために本書を発行したのだという。

     主要条文について、実際の裁判や事件、事故などを紹介しながら解説。沖縄の実態と照らし合わせることで、憲法の意義と形骸化の実情が良く理解できるように工夫されている。

     同協議会の高良鉄美会長(琉球大学大学院教授)は「かつて沖縄には9条がなかった。今、オスプレイ配備をはじめ日本全体が9条から外されようとしている」と語っている。