「森友問題」をめぐる公文書改ざんなどで国会は混乱している。そんな中でも安倍首相と自民党は改憲への意欲を示し、3月の自民党大会では「自衛隊明記」を柱とする条文改正の方向を打ち出している。こうした動きをどう見るか、小林節慶応大学名誉教授に話を聞いた。
Q 首相らは自衛隊を憲法に明記しても何も変わらないと言っています。本当ですか?
とんでもない。自民党大会で示された案(たたき台素案)が条文化されたら、海外派兵する自衛隊が合憲になってしまいます。
自民党は9条2項(戦力の不保持、交戦権の否認)を残しつつ、新たに「必要な自衛のための実力組織としての自衛隊を保持する」旨を憲法9条に書き込もうとしています。
●専守防衛に徹する
日本は国際法上の自衛権はあるが、9条2項により自衛戦争はできない――というのがこれまでの憲法解釈です。自衛のためであっても自衛隊が他国にズカズカと入っていってはいけない。専守防衛に徹するということ。自衛隊は国内でのみ活動できる第2警察のような存在なのです。
あくまで行政権の枠内の警察権で危険除去を行うことが想定されています。犯罪が起きれば警察が出て行く、火事なら消防署。それと同じで、日本が攻撃されれば自衛隊が対処するのです。国際法上の「軍隊」ではありません。
ですから、自衛隊は「必要最小限の実力組織」と位置づけられてきました。安保関連法で集団的自衛権の行使が可能になったといっても、米軍を助けるための海外派兵は「必要最小限」の範囲を超えてしまうため、できません。これが政府自身の伝統的解釈です。
●まるで火事場泥棒
自民党の素案はこの「最小限」をこっそり削除しています。森友問題でごたごたしている時に、火事場泥棒のような所業だと言えます。これだと、必要に応じてなんでもできることになりかねません。海外派兵も可能になります。
「そうはいっても9条2項が歯止めになるのでは」という意見もあるでしょう。しかし、ローマ法以来、「新法は旧法に優先する」という原則があります。例えば最高裁判例。あるテーマで新しい判例が出れば、古い判例は意味をなくしてしまいます。それと同じで、9条2項が条文として残っても、意味をなさなくなるのです。
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