民間放送局や番組制作会社の労組でつくる民放労連の春闘回答は昨年同期をやや上回っている。在京キー局の労組が20年ぶりにベアを引き出すなど前向きな変化が生じているのが特徴だ。背景には、深刻な長時間労働で若者に敬遠されがちな放送業界で、賃上げによる人材確保の必要性が認識され始めていることが挙げられる。
3月末の統一再回答を経て72組合8支部の回答を集約した。回答平均は定期昇給相当分込みで8183円(2・62%)。昨年同期を357円上回っている。
ベア獲得は13組合3支部。在京キー局ではTBSテレビの労組が3千円を引き出した。民放労連によると、キー局は2000年頃から一時金で成果配分を行う姿勢を強めており、同社でのベアは20年ぶりだという。テレビ東京もベア相当の賃上げ5千~千円(22~36歳)と若手に厚みをもたせた。北海道放送は22~35歳に5千~7千円と「17年ぶりの大幅ベア」を回答。36歳以降については残業代の算定基準を見直し、収入増となるようにする。
民放業界では近年、相次いで労働基準監督署が是正指導に入るなど、長時間労働が深刻化している。人材確保への危機感は、キー局も例外ではなく、地方局はさらに強い。アナウンサーや技術職が流出する傾向もみられるという。
制作会社でもベアを獲得している。親会社である放送局の労組が自社に制作会社への発注料金の引き上げを要請し2千円のベアにつなげた事例や、組合の段階的な正社員化要求に対し、契約社員全員の正社員化を回答した成果などが報告されている。放送局構内で働く下請け労働者に一律2万円の慰労金支給や、食堂の無料開放、クオカード支給などの回答も寄せられている。
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