ウーバーがまた大不祥事を起こした。米アリゾナ州で実施していた自動運転車の公道実験で3月18日、歩行者をはねて死亡させたのだ。事故の映像を検証した複数の専門家は「防げた事故」「システムに不具合」と指摘した。
自動運転車には、前方を監視する三つの装置が付いているが、どれも歩行者を感知せず、車は減速しなかった。独BMW社の幹部は、ウーバーの安全技術は自動走行できる領域に達していないため「事故は必然的だった」と言い切った。特に、赤外線レーザーの性能が未熟だという。
ウーバーのコスロシャヒ最高経営責任者も1月、「走査型ライダー」と呼ばれるこの赤外線レーザーが高額であることなどが、技術開発の課題だと認めている。こうした安全問題については、社内にかん口令が敷かれていた。
●拙速な開発を見直せ
地元テレビ局は、ウーバーが使用していたボルボXC90は、安全上の懸念からカリフォルニア州で禁止されていた車両だと報じた。では、なぜそれが他州で認められたのか。
米国では、自動運転の実験で複数の州が誘致合戦を展開している。アリゾナは規制が最も緩い州だ。公道実験に特別な許可は不要で、テスト中の出来事を当局と情報共有する必要もない。
消費者団体や労働組合から今、拙速な開発を見直せという声が高まっている。
事故の映像からは、乗車していた運行管理担当者がよそ見をしていたことが分かる。しかし、自動運転モードは「レベル4」だったといわれ、基本的にはよそ見していても大丈夫なはず。一方で同社は半年前、運行管理担当者の2人乗務を1人体制に変更し、社内から安全を懸念する声が上がっていた。
●二転三転する発言
コスロシャヒ氏は同社のトップに就任した当初、自動運転の開発をやめる方向だったが、周りから説得され翻意した。数カ月後には「完全無人化には10~15年かかる」と発言。その後「一部では12~18カ月で実現したい」と修正した。
同社は今回の事故を受け、北米4カ所の公道実験を一斉に中断した。サンフランシスコではこれを再開すると言い出した、と思ったら再申請しないと発表した。
二転三転する発言や見解に、指導者の統制力が問われている。先月は来日し、「日本でライドシェアはやらない」と強調した。果たしてこの発言も信用できるのかどうか。
昨年は不祥事まみれでトップが引責辞任したウーバーが、再び大きな試練に立たされている。(国際運輸労連内陸運輸部会長 浦田誠)
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