私たちは、長時間過重労働、残業代不払いがまん延している運送業・引っ越し業を中心に、ブラック企業で働く人の相談を受けて交渉し、不払いのお金を支払わせ、労働条件を改善させている。心身の健康を奪われた人に労災申請のサポートをすることもある。
●過労で倒れた運転手
ある運送会社で働くドライバーが、長時間過重労働により脳出血で倒れた。一命は取り留めたが、意思疎通も困難でほぼ寝たきりの生活を余儀なくされた。しかし会社は、プライベートな病気(私傷病)だからと健康保険の傷病手当の手続きだけして、半年の休職期間満了を告げ解雇した。
関連会社で働く組合員はと私は、グループ会社のなかに救急搬送されたドライバーがいるといううわさを聞き、この辺りで搬送されたならこの病院だろうと見当をつけて探し、病院に名刺とご家族への伝言を託した。その後、家族と協力してデジタルタコグラフのデータ(運行記録)を証拠保全で押さえ、それを元に申請し、労災認定された。
会社は謝罪して解雇を撤回し、賠償金も支払った。本来なら労災で休業中の解雇は無効。しかし会社は、人が倒れても死んでもごまかせる限りごまかす。会社は金銭的な責任は取ったが、労働者は自らの意思で移動することも家族との会話もできないままだ。
●自民支持者に訴えたい
「働き方改革」の名の下で導入されようとしている高度プロフェッショナル制度(高プロ制)は、単に残業代をタダにし、労働時間の規制をなくして、過労死を拡大する制度だ。
私たちの組合の上部団体である全国ユニオンは3月15日、厚生労働省と交渉を行った。高プロ制の法案要綱では、1日8時間・週40時間という労働時間の規制がなくなるため、休日は4週間に4日与えれば違法ではなくなるように読める。しかし、厚労省が何の規制も考えていないわけはないだろうと思い、例えば24時間、24日の連続勤務は違法かどうかと質問した。
健康確保措置を取れば違法ではなくなるというのが厚労省の回答だった。こんな法案を成立させたら、仕事のせいで合法的に人が死んでしまう。
自民党支持者にも、愛国心があると自負するネット右翼と呼ばれる人にも、これだけは考えてほしい。労働問題では、大多数は私たちの立場と違わないはずだ。外食大手ワタミ創業者の渡辺美樹参院議員は、予算委員会の公聴会で過労死遺族に向かい、どうしたら高プロ制を導入できるかと質問した。高プロ制は、ブラック企業が作りたくて仕方がない法律だ。目先の金もうけしか頭にない経営者の言うままに、極悪な法律を作る人たちが日本を大事にしようとしているとは思えない。(プレカリアートユニオン委員長 清水直子)
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