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    〈最賃千円時代の特定最賃〉(5)/地道な努力に公益が理解/長野の「印刷」

     長野の印刷業は、全国で最も高い28円の上げ幅で改定した。改定額は809円で、地賃(795円)を14円上回る。昨年に続き、今年も連合長野が地道な努力を重ね、組合決議、労働者の署名、最賃協定で昨年を上回る「合意」を集め、改定にこぎ着けた。

     印刷業の特定最賃は長野と京都にあるが、効力があるのは長野だけ。長野県は印刷製版業の事業所数が比較的多いといわれる。

     連合長野は前年同様、改定に際し、業界団体の長野県印刷工業組合に協力を要請。しかし、担当者によると、双方の主張はかみ合わなかったという。16年度に34円引き上げで決着させたばかりでもある。最低賃金審議会の使用者側委員からは「存続させる意味があるのか」との疑問も投げかけられたが、最終的には全会一致による改定となった。

     決め手となったのは、連合長野の10地協が協力し、従業員がわずか数人の零細事業所にも、一軒一軒訪問した地道な努力だった。

     同県には印刷労連の組合があるが、それだけでは改定の申請に必要な「合意」数に届かない。そのため、連合に加盟していない労働組合や、従業員会、未組織の中小零細事業所を訪ね協力を求めた。組合のない企業で署名を集めるにはまず経営者の理解を得ることが必要。そのうえで、そこで働く労働者に協力を求めることになる。

     結果、昨年を上回る、1200人超分を集めた。こうして集められた「合意」は労使による意思の表明と受け止められた。使用者側が改定に難色を示す中、最賃審の公益委員が労働側の主張に理解を示したのである。

     審議では、県外の格安印刷会社の参入による賃金ダンピングの恐れ、品質低下への危機感が語られ、技術・技能の継承の必要性など県内印刷産業の発展についても話し合われたという。労働側委員の一人は「労使の立場の違いはあるが、業界を何とかしなければならないという思いでは一致できたのではないか」と話す。

     結果は公益労使の全会一致で改定額を決め、今年度も全国で最も高い上げ幅での改定となった。(つづく)