3月14日に行われた金属大手の集中回答は、ベースアップなど賃金改善の平均が1548円で、前年を500円程度上回った。好業績が反映し、一時金は平均5・37カ月と多くが前年を上回る。高倉明議長は「従業員の意欲、活力の向上、企業基盤の強化に寄与する。今後の中堅中小労組、非正規労働者の底上げにつながる成果」と評価した。
交渉終盤に電機連合の大手13組合が、昨年を500円上回る1500円のベアで労使合意に至ったと報じられ、相場を形成した。自動車は先行11組合全てで昨年以上となり、鉄鋼や造船なども同500円プラスの1500円、JAM大手組合も昨年を上回った。
今後中小の交渉が本格化する。高倉議長は「歴史的な人手不足、繁忙感から、総じて規模の小さい企業の組合ほど要求が高い。大手を超える賃上げの実現、全ての組合での賃上げ獲得が今春闘の最大の課題だ」と強調した。
●トヨタが日本語回答/自動車
水準感が全く分からない――交渉が大詰めを迎えた3月10日の会見で、高倉明会長は昨年までとの交渉の違いを語った。14日の集中回答でも、正午過ぎに予定された記者会見の直前まで、金属労協事務所内に設置された一覧表では自動車大手の回答欄が埋まっていなかった。
交渉では、「百年に一度の変革期」と技術革新による事業の将来不安が経営側から強調されたという。結果は、トヨタが「一般組合員の賃金改善分は昨年を上回る」という驚きの(数字のない)日本語回答。その水準や内容について高倉会長は「聞いていない」と説明。「共闘の観点からも問題だ」と苦言を呈した。
日産がベア3千円相当の満額回答で、各社1500~2400円。部品関連の代表である日本特殊陶業も1600円を獲得した。一時金は、トヨタの243万円をはじめ、満額回答が並んだ。
非正規労働者の処遇改善では、日産、ダイハツが時給20円のほか、定年後再雇用社員の引き上げなど有額の回答が出ている。
●統一闘争の真価を発揮/電機連合
「ほっとしている」。野中孝泰委員長は集中回答の会見で、率直な思いを吐露した。電機連合は今年、東芝とシャープが統一闘争に復帰。数年ぶりに先行大手組合がそろった。交渉スタイルは、先行13組合がスト権を産別の中央闘争委員会に移譲し、回答が歯止め基準を1社でも下回ると、全体で争議行為に入るという、厳しい縛りを特徴としている。結果は、13組合で改善分1500円、企業内最賃千円増額を確保した。
ベア分の賃上げ率は0・5%程度。物価上昇分との関係では微妙な水準だが、野中委員長は5年連続で累積9千円のベアを積み重ねていると強調した。今後、関連子会社や、地場中小企業への波及が必要と力を込めた。
政府が賃上げの旗を振りながら、デフレ脱却や経済の好循環が進まない点にも言及。「可処分所得はリーマンショック前に戻っていない、中小企業に行き渡らない、将来不安から大半は(賃上げ分が)貯蓄に回っている。政府がすべきは、社会保障などの社会課題に手をつけることだ」
●百人未満で2251円/JAM
「大手と中小は見える景色が全く違う。利益は上がるが先行き不透明感が強い大手と違い、中小はいま大変忙しい。人が辞めていくのをどう止めるか。一定の回答がないと職場は収まらない状況だ」。安河内賢弘会長は職場の現状を説明し、「特に中小の組合が元気だ」と語った。
交渉最終盤に「昨年実績以上」を確認。先行12組合ではほぼ全てで昨年以上を引き出した。改善分は千~2351円。
同日までに、76組合が回答を引き出し、ベアなど賃金改善分の平均は1854円。6千円を要求基準とした直近3年で最も高いという。特に百人未満の小企業で2251円と高い水準で集約している。安河内会長は「今後が勝負」と述べ、3月内決着をめざす。
トヨタの水準が示されなかったことについては「労使双方戸惑いはあったが、JAMの要求はあくまでも絶対額。賃金水準の高い大手ではなく、自社の立ち位置を確認し、労使で交渉するきっかけになったのではないか。ただ、難しさはあった」。
●鉄・重工は1500円/基幹労連
基幹労連の総合組合(大手)が引き出した回答は、鉄鋼4社が2018年度1500円・19年度1500円、造船・重工7社が18年度1500円となった。非鉄では住友金属鉱山が18年度3500円の満額回答を得ている。
この結果について「要求に対しては十分とは言えないが、人への投資を訴えた組合の主張に一定理解が得られたもの」(弥久末顕事務局長)と判断した。
ベア額については、3月9日時点で大手労組委員長の会議を招集し、産業・部門のまとまりを重視して「1500円以上」を申し合わせたという。
鉄鋼の一時金は業績連動方式で決まる仕組みで、「現時点では昨年より増額になる見通し」だ。
65歳定年制の要求に対しては「65歳現役社会に向けた条件整備」について、労使協議の場を設けることになった。
品質データの不正が発覚した三菱マテリアルでは、外部調査委員会が3月末に報告書を発表してから本格的な交渉に入る予定。
神田健一委員長は「(中小・業種別など)サプライチェーンの仲間を含め、今後、全体の労働条件を向上させたい」と語っている。
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