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    〈最賃千円時代の特定最賃〉(2)/大都市部総崩れの商品小売/17年度改定の特徴

     苦戦が続いている「商品小売」。2017年度改定では、大都市を抱える都県で効力ある特定最賃が次々と姿を消し、南九州では連鎖的に効力を失っている。「商品小売」系は崖っぷちに立たされている。

     17年度の改定では、近年地域別最賃に水準で追いつかれながらも改定させてきた愛知、千葉がついに地賃適用となった。地賃に一時的に追いつかれた埼玉では対象業種を絞り、「百貨店・総合スーパー」として新設を申請した。全国的な傾向で、必要な数の最賃協定などの合意を集めやすく、適用対象範囲が狭まるので、使用者側委員の理解も得やすいのではないかとの判断に基づく。だが、審議は越年した。

     埼玉の適用業種の絞り込みに際しては、埼玉労働局の調査が長引いていた。従業員50人以上で衣食住関連の商品を各10~70%未満販売する業態が対象だが、同局によると、改定要件に関する調査方法を決めるのに時間を要したという。このほど調査結果が出され、新設の要件を満たしていないとの結論に至り、17年度は「取り下げ」となった。他県ではすんなり認められるケースもある。労働局の対応の違いの背景には、その県の使用者側の姿勢の違いがあるとみられる。3月9日、労働側は再び18年度の新設の意向を表明。捲土(けんど)重来を期す。

     南九州地方では、15年度の鹿児島、16年度の宮崎に続き、17年度は大分が地賃適用となった。大分は地賃に追いつかれて2年目。連合大分の担当者は「試用期間など新人の適用を外すことで歩み寄りを図ったが、製造業のように熟練までの期間は必要ないと拒否された。同一労働同一賃金にかなう制度の趣旨や、最賃水準で働くことの是非を問うたが、及ばなかった」。より説得力のある、最賃協定を集める申請方式(労働協約ケース、※3月6日付けを参照)しか打開策はないと総括したという。

     

    ●地賃上昇が重荷に

     

     UAゼンセンの担当者は「使用者側委員からのプレッシャーが今年は特に強かった」と振り返る。背景にあるのが、地賃の上昇に対する使用者側の抵抗感の強まりだ。併せて、地賃の水準が高まったことで、改定に必要な企業内最賃協定を集めること自体難しくなっているともいう。

     来年度の地賃改定で3%引き上がると、追い越される商品小売系の特定最賃は9府県(表)。厳しい取り組みが続く。

     

    ●連鎖反応に歯止めを

     

     熊本では16年、地賃の水準が迫ってきたため、適用業種を「商品・小売」から「百貨店・総合スーパー」に切り替えようと、新設を申請(労働協約ケース)。その年の審議で、労働局が使用者側委員の不安をあおるなどの不手際があり、実施できないでいたところ、17年度の審議で効力を回復させた。金額は740円、地賃を3円上回る。

     16年度の混乱の際、改定の要件がそろっていればよほどのことがない限り改定する――という旨の了解事項を確認。これに沿って金額設定にこぎ着けた。

     使用者側委員が交代する際、特定最賃制度の趣旨などについてきちんと引き継ぎがなされず、混乱しがちだという。経団連が毎年の経労委報告で「特定最賃の廃止」を強調していることも不必要な混乱に拍車をかけている。

     18年度改定以降、南九州地方の連鎖反応を食い止めることができるか。震災復興需要による有効求人倍率の上昇、人手不足などの追い風を生かしながらの模索となる。

     

    ●必須の取り組みに

     

     UAゼンセンは今年の賃金闘争で、企業内最賃協定の締結、引き上げを「必須の取り組み」と位置づけを強めた。報告のない妥結申請は本部が妥結を承認しない方針。特定最賃の改正・新設を見据える。

     3月5日現在で192組合が要求し、18歳ポイントの平均要求額は4247円増の16万3849円となっている。足元を固め、巻き返しを図る。(つづく)