東京電力福島第1原発事故の収束作業や九州電力玄海原発の定期検査に従事し白血病を発症した男性(労災認定済み)が、両社に対し損害賠償裁判を闘っている。東京地裁の口頭弁論(2月22日)では、東電、九電とも「(作業と疾病には)因果関係はない」という態度に終始した。
●破れたままの鉛ベスト
原告男性は40代。東日本大震災が発生した2011年は妻子と暮らす福岡県で溶接工をしていた。知人に誘われ、同年10月「自分の溶接技術が役に立つなら」と福島へ。
2次下請けの作業員として採用されたが、労働環境は劣悪。線量の高い4号機付近での作業だったが、被ばくを防ぐ「鉛ベスト」は破れており、放射線を遮蔽(しゃへい)するには十分ではなかった。人数分のベストがないときは「こっそり入れ」などと指示されたこともあるという。
記録があるだけで約2年間の被ばく線量は19・78ミリシーベルト(mSv)。14年に白血病を発症し、労災認定された。「国が労災と認めているのに賠償しないという言い分は許されない」との思いから16年、両社を提訴した。
●健康破壊は自己責任か
被ばく線量計を着けさせなかったり鉛で覆わせたりと、健康管理がずさんな下請け業者は多いという。
東電は先ごろ、今年4月以降の収束作業の労務費(基準単価)切り下げを発表した。口頭弁論後の報告集会で被ばく労働者ネットワークのメンバーは「賃金が下がれば、長時間働くために作業員は自発的に(線量計が限界値に達しないよう)細工をするようになるかもしれない。健康を害しても『自己責任』と片づけられるかもしれず危険だ」と警鐘を鳴らした。
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