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    労働時間の規制緩和許さない/働き方改革関連法案/日弁連が院内学習会

     日本弁護士連合会は2月28日、働き方改革関連法案の労働時間法制について院内学習会を開いた。安倍首相はその数時間後に、裁量労働制の適用拡大を法案から削除すると表明したが、学習会では高度プロフェッショナル制度(高プロ制)など規制緩和を促す仕組みに批判が相次いだ。

     過労死事件に取り組む川人博弁護士は高プロ制に触れ「あらゆる労働法の規制をなくすことが特徴で、究極の労働時間規制撤廃制度。容認してはならない」と強調。裁量労働制適用者の過労死事件を紹介しながら「労働時間の短縮とは全く関係がなく、徹夜勤務が容易になり、非常に危険だ」と語った。

     時間外労働の上限規制(最大100時間未満)についても、過労死の絶えない自動車の運転業務・建設業、医師への適用が猶予・一部除外されることを問題視。上限規制を一定評価する意見に対し「企業は違法残業を指摘されれば残業時間を減らさずに、36協定の上限を高く設定して解決しようとする。よりましではなく、はるかに危険だ」と批判した。

     毎日新聞記者の東海林智氏は「労働時間の把握が過労死防止の第一歩であり、法律で義務化すべきだ」と述べた。裁量労働制と高プロ制は労働時間規制の緩和という点で共通していると指摘。「労働者の命を守る規制の緩和が改革なのか。改革の正体は労働法が適用されない世界をつくり、労働者を奴隷化することではないか」と語気を強めた。

     東海林氏は副業や個人請負化が労働者の権利を奪い、長時間労働につながる事例を紹介し、8時間労働を守らせるよう呼び掛けた。

     日弁連の「『あるべき労働時間法制』に関する意見書」を星野圭・貧困問題対策本部事務局長が解説した(表)。

     

    ●過労死遺族が訴え

     

     電通の違法残業で過労自死した高橋まつりさんの母、幸美さんは「働き方改革関連法案は過労死防止と矛盾している。長時間労働を助長するもので絶対に許せない。法案が成立すれば、娘のような長時間労働も全て合法化される」と語った。裁量労働制の適用拡大と高プロの削除、時間外上限100時間未満の見直し、勤務間インターバルの義務付けを求めた。