――政府は雇用関係によらない働き方を増やす方向ですが、技術革新で経済・社会構造が変化するので仕方がないのでしょうか?
当面は人手不足が続きますが、そう遠くないうちに技術革新による「人余り社会」への転換が予測されます。その対応はディーセントワーク(働きがいのある人間らしい労働)を基盤とすることが肝心。そのためには異次元の労働時間短縮、ワークシェアリングと最低生活保障の具体化が必要です。ドイツの金属産業労組(IGメタル)が育児・介護の責任を負う労働者について、週28時間労働(最大2年間)の労働協約を締結しました。
このように技術革新を暮らしの向上に生かしていく方向にかじを切るべきではないでしょうか。経産省は、個人事業主であるフリーランスの技術を向上させることで、彼らの生活の安定につなげようと考えているようですが、個人事業主化の方向は猛烈な受注競争を招きます。安定した社会とは逆の、仕事を奪い合い他人を排除する、排他的な社会の到来が懸念されます。
●米国がモデルか
――大幅な処遇改善をすると、グローバル競争に勝てないと言われそうです。
その議論の行き着く先は「底辺への競争」です。国際労働機関(ILO)は2006年に「雇用関係に関する勧告」を採択し、個人事業主を偽装することで雇用労働者の労働基準(働く者を守る最低限の規制)をすり抜ける動きを警告しました。「底辺への競争」に歯止めをかけることが今、問われているのです。日本もその方向で国際社会と歩調を合わせるべきです。
しかし、安倍政権は「非正規という言葉をなくす」などと威勢のいいことを言いながら、権利が全く保障されない〃究極の非正規労働〃というべき個人事業主的就労を広げようとしています。
米国は「インディペンデントコントラクター」と呼ばれる個人事業主を偽装する働き方が多い国です。経産省や政府、周辺の学者らは米国社会をモデルに想定しているように思われます。残業代が支払われない高度プロフェッショナル制も米国のホワイトカラーエグゼンプションという制度がモデルです。
――最低生活保障とは?
まずは過労死ゼロ社会、最低賃金時給1500円の実現です。雇用面の整備に加えて、子育て、教育、介護、住宅など、人が生きていく上で必要な保障を国が責任を持って行うなど、大量の失業に備えた、社会的公共サービスの充実が欠かせません。そのための税制や社会保障など社会システムの転換が急務です。
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