働き方改革関連法案に盛り込まれている裁量労働制の営業職などへの適用拡大。その問題点をブラック企業対策弁護団代表の佐々木亮弁護士に聞いた。
――「裁量労働制なら自由に仕事ができる」と政府は説明してます。
佐々木 裁量労働制で労働者に与えられる「裁量」とはそもそも何か? あえて言えば(1)仕事の進め方(2)出勤・帰宅の時間(の自由)――です。しかし仕事の量を自分の裁量で決めることはできません。
たとえ午後3時に帰宅する裁量があると言われても、10時まで残業しなければ終わらない仕事量を業務命令で与えられたら、実際には早く帰る自由はありません。想像してみてください。「夏休みだからたくさん休んでいいよ」と言われたのに、毎日やっても終わらない大量の宿題を出されたら、もうそれは「休み」とは言えません。裁量労働制の「裁量」もこれと同じです。
――裁量労働制の拡大で誰が得をするのですか?
佐々木 一番特をするのは労働者を使いつぶすブラック企業です。裁量労働制では、いくら残業させてもあらかじめみなした分の賃金しか払わなくても良いのです。つまり「定額働かせ放題」が可能な制度。対象を拡大すれば、これまで適用外だった管理業務や営業職にまで、広く「定額働かせ放題」が可能になるでしょう。今でも、残業代を払わない企業は後を絶たないのですから、「これなら合法的に残業代を節約できる」と、安易に導入しようとするブラック企業が増えるのは目に見えています。
裁量労働制は労働者にとってはほとんど良いことはありません。一方で、ブラック企業に餌を与える危険な制度です。
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