2010年に水道事業の再公営化に踏み切ったパリ市。当時副市長と水道局長を務めたアン・ル・ストラさんが2月18日、都内でその経験と現状について語った。民間時代より収益を上げながら、水道料金の値下げや従業員の賃上げを実現できたと語り、教訓として「意思決定への市民参加と情報公開を追求したことが大きい」と述べた。
パリ市は、シラク市長(後の大統領)時代の1985年、水道事業を3分割して民間に委託した。大手ベオリアの関連子会社などが受注したが、料金値上げや不透明な財務運営などが問題視され、ベルトラン・ドラノエ市長の下で2010年に再公営化された。
新たな公営事業体は翌年、4千万ユーロ(約52億円)の支出を削減。8%の料金引き下げを実施した。アンさんは「新事業体は株主配当が不要で、収益を親会社に還元することもない。お金を水道事業の新たな投資に回すことでサービスも向上できた」と語った。
アンさんが強調したのは新事業体の運営・意思決定への住民参加だ。「利用者が事業について直接意見を述べ、議論できる場(オブザーバトリ)をつくった。研究者や労働組合員を含め一般市民なら誰でも参加できる。その代表が事業体の経営評議会メンバーになっている」と述べた。
フランスでは、パリ市以外にも再公営化の流れが強まっているという。
講演は、全水道会館・水情報センターなどが主催した「みらいの水と公共サービス」集会で行われ、約230人が参加した。
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