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    「アリさん」争議が一括解決/中労委で和解/会社は労働法順守を確約

     「アリさんマークの引越社」で知られる引越社関東などによる、一連の不当労働行為や賃金未払い事件が2月13日、中央労働委員会で一括和解した。組合は訴えを取り下げ、会社は解決金を支払う。和解条項には、正常な労使関係の実現や労働法の順守、組合員には荷物損傷などの弁償金負担を原則として求めないことなども盛り込まれている。

     同社では、残業代不払いや違法な天引き、弁償金負担の強要などが行われていた。こうした問題の是正を求めて労働組合(プレカリアートユニオン)に加入した野村泰弘さんに対しては不当配転や懲戒解雇を行った(いずれもその後に撤回)。社内に野村さんの顔写真入りの「罪状」と書かれた紙を張り出し、組合員に脱退を強要するなど「違法・不当労働行為のデパート」とも呼ばれていた。

     一連の不当労働行為については東京都労働委員会で救済命令が出され、その後に中労委で審査が続いていた。

     

    ●社会の共感を追求

     

     プレカリアートユニオンの清水直子委員長は「相手は大きな会社で、こちらは少数。なので、ユーザーを含めて外の人たちの共感を得る闘いを追求した。映像・動画を発信しながら会社の不当性を訴え、最後には『このままだと評判を落とすだけ。会社の利益を考えるなら早く解決すべきでしょう』と迫った」と語っている。

     野村さんは退職し、同ユニオンの専従者になる。今後は「組合員には(原則として)弁償金負担を求めない」とした和解条項に基づいて、現役社員らにも組合加入を呼び掛けていくことにしている。