全労連などでつくる労働法制中央連絡会が2月10日、都内で「働き方改革」一括法案を阻止する決起集会を開き、200人以上が参加した。法案に盛り込まれる高度プロフェッショナル制度の導入や裁量労働制の適用拡大は、過労死防止の流れに逆行すると指摘。過労死遺族が長時間労働の危険性と残された家族の苦しみを訴えた。
●娘の死風化させないで
2013年7月に心不全で亡くなった佐戸未和さん(当時31)は05年4月、日本放送協会(NHK)に記者として入局。亡くなる直前の6月に都議選、7月に参院選の報道を担い、時間外労働は直近の1カ月で159時間だった。
母親の恵美子さんは、「災害など一刻の猶予もない取材に奔走したのならともかく、選挙の当確を早く出すために命を落としたと思うと怒りを抑えられない」と訴えた。未和さんの死後、報道局長特別賞が贈られている。
NHKとの話し合いで未和さんの上司からは「記者は時間管理ではなく、裁量労働で個人事業主のようなもの」と何度も言われた。労働時間管理は上司の責任であり、過労死は防げたはずだと恵美子さんは考える。その後、上司や関係者は栄転し、誰も責任を取らなかった。恵美子さんは「過労死が法の精神に反することは明らか。NHKは本当に反省しているのか」と苦しい表情を見せた。
未和さんは横浜放送局のデスクへの昇進と結婚を控えていた。恵美子さんは「未和は生きる気満々でしたが、体は悲鳴を上げていたのでしょう。半身不随でも植物人間でもいい。ただただ生きていてほしかった」と声を詰まらせた。
東京過労死家族の会代表の中原のり子さんは政府の「働き方改革」への反対をあらためて表明した。中原さんは小児科医の夫を過労自殺で亡くしている。「私の夫は月83時間の残業で労災が認定されました。79・5時間で亡くなり、労災認定されない方も多くいます。過労死ライン(月80時間)を超える時間外上限規制を設けた政府は国民を過労死させないという気持ちがあるのでしょうか」と訴えた。
●労働者の権利生かそう/関連法案に批判相次ぐ
自由法曹団の鷲見賢一郎弁護士は「安倍首相は労働者のため(の改革)と言うが、法案に労働者を保護するという言葉はない。経済成長のための改革ゆえに過労死ラインを平然と容認している」と批判。労働法が適用されない請負労働拡大に踏み込んでいる点も問題視した。
林博義・全国一般書記長は大手寝具メーカー、丸八真綿の子会社で営業職の正社員が業務委託契約に変更された事例を報告。時間管理や業務は正社員と同じで、新人教育も担当していた。組合は正社員に戻すよう求めている。林書記長は「こういう働き方が当たり前になっていくのではないか」と懸念を示した。
新日本婦人の会中央常任委員の小島妙子さんは、働き方に関わる話題をざっくばらんにおしゃべりする「働き方カフェ」の取り組みを紹介。一番多い話題は家族の働き方で、「労働者の権利を生かすことが大事。憲法や労基法、組合に守られていることを知らせていきたい」と述べた。
政府が契約社員や最低賃金で働く労働者に、裁量労働制の適用を可能と閣議決定したことに対し、最賃引き上げ運動を展開する団体エキタスが抗議の緊急デモを行うと語った。
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