2~3年前から流行している「下流老人※」という言葉。私たちソーシャルワーカーの間ではものすごく評判が悪いんです。「生活保護基準相当で暮らす高齢者が下流だ」と定義されていますが、所得で人間を上中下に分ける考え方がそもそも間違ってます。
また、必要以上に高齢者の生活不安があおられ、「老後には貯蓄が3千万円必要」といった論調がマスコミにあふれるようになってしまいました。全く現実離れしています。
介護に関わりたくさんの高齢者の生活に触れてきましたが、その経験からいえるのは「住む場所があればなんとかなる」ということです。住む場所こそが老後の安心の基本。たとえ要介護になっても、在宅介護でやっていけます。
お金は大切ですが、「何千万円ためないと…」という脅しには躍らされないようにしたいものです。
高齢化社会をめぐっては「高齢者が増えて社会保障にお金がかかる。社会全体としてやっていけない」という不安もあります。だけど本当にそうなのか?
年をとれば病気になり、介護が必要になるのは当たり前。そこに必要なコストを社会全体でどう負担するかを考えるのが政治の仕事のはず。でも、今やられているのは「お金がないから、医療も介護も切り下げましょう」ばかりです。
お金はあります。企業の内部留保は毎年20兆円以上も増えているし、高額所得者への税制優遇もある。そこから税金をきちんと取ればいい。それに1基1千億円のミサイルシステムをぽんと2基も買ったりしてる。福祉の現場にいると、今「大砲かバターか」が問われていることがよく見えてきます。(明星大学 非常勤講師)
※生活困窮者支援を行うNPO法人ほっとプラスの藤田孝典氏による造語
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