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    〈プレカリ専従日記〉職場変える新たな組織戦略を/プレカリアートユニオン委員長 清水直子

     2007年から非正規雇用が中心の「若者ユニオン」の活動に参加し、12年に、十数人でプレカリアートユニオンを結成した。非正規雇用・不安定雇用・ブラック企業で働く比較的若い世代でも、非正規雇用が当たり前になったからこそ、個別案件の解決に終始するのではなく、職場に仲間を作って働きながら職場を変え、よりよい労働条件を実現したいと活動してきた。6年弱で組合員は350人を超える。

     

    ●「限界組合」脱皮を

     

     日本の労働運動に足りないのは、組織化、戦略(的思考)、オルガナイザーと次世代の育成。そして、これらを体系的に学ぶ場だと感じている。個人加盟の労働組合が組合員300人くらいで頭打ちになり、創立メンバーや専従の高齢化に伴って、縮小するのはなぜか。労働組合、特に闘っているといわれる合同労組やユニオンは、次世代の担い手を仲間の中から育てられず、限界集落ならぬ「限界組合」化しているのではないか。経営戦略の本はたくさんあるのに、労働運動は武勇伝か法律マニュアルばかりで、戦略や戦術を体系的に学んでトレーニングできるようになっていない。

     そんな課題を解決するために、この3年ほど、組合活動にコミュニティー・オーガナイジング(CO)を生かす取り組みをしてきた。米国のナショナルセンター、AFL・CIO(米国労働総同盟・産別会議)が組合の活性化にCOを活用していると知ったことがきっかけだ。これは、コミュニティーの当事者自身が、仲間の力を引き出し、自分たちの力で社会を変える手法で、トレーニングが可能なようにその手法が体系化されている。

     

    ●ワークショップに参加

     

     17年11月、米国の労働団体レイバーノーツの活動家を招いて、日本で、職場の組織化を進めるためのワークショップ「トラブルメーカーズ・スクール・ジャパン」が行われ、プレカリアートユニオンも、6人のチームで参加した。テキストは、レイバーノーツの『SECRETS OF A SUCCESSFUL ORGANIZER』(『成功するオルグの秘訣』)の抜粋。翻訳が日本労働弁護団から『職場を変える秘密のレシピ47』(※)として出版されている。人間相手なので、常にそれ通りでうまくいくとは限らないとしても、レシピを学ぶことは大切だ。

     次世代の育成には、「俺の背中を見て育て」は不要。彼らが組合活動において「何を」「どうすると」「どんなことができるか」を見通せるようにすること、組織化の手法や戦術を体系的に学べるようにすることが必要だ。精神論とパワハラは関係が深く、組織内のタテの関係とセクハラも関係が深い。手法が体系化されて学べるようになることは、労働組合組織内の根深い問題の解決にも役立つはず。

     組織拡大は必ずしも組織化ではなく、仲間の力を引き出し、高めながら、要求を実現、課題を解決する、そんな仲間を作っていくこと。これが実践できれば、労働組合はブレイクスルー(躍進)し、職場も社会も変わるだろう。

     

    ※問い合わせや注文は、日本労働弁護団(http://roudou-bengodan.org/books/)のウェブサイトを参照

     

    「プレカリアート」は不安定な労働者という意味の造語