沖縄は今年、選挙イヤーである。その第1幕、1月21日投開票の南城市長選挙で翁長雄志県知事率いる「オール沖縄」が支援する新人・瑞慶覧長敏氏が65票差で大接戦を制した。2週間後の名護市長選に向け、「オール沖縄」陣営の意気は大いに上がった。
現職の古謝景春氏(自民などが推せん)は前回、無投票当選しており、盤石の強さを誇ってきた。一方で、公立保育所の廃止を強行するなどの行政運営に不満が募っていた。SNSでの中傷発言が批判され、取材を巡ってマスコミとの軋轢(あつれき)もあり、資質を問う声もあった。
●選挙イヤーにはずみ
一方の瑞慶覧氏は、出馬表明が昨年12月と出遅れ、支持する市議も圧倒的少数だったが、4期目を目指す現職への批判の受け皿になった。相次ぐ米軍機事故なども追い風となったであろう。09年の衆院選で民主党から初当選。その後の落選を経て、鳩山由紀夫元首相が設立した東アジア共同体研究所の琉球・沖縄センター事務局長を務めてきた。現職の無投票当選がささやかれる中で出馬を決意し、当選を果たした。
今後、2月2日投開票の名護市長選、自衛隊の新基地問題で揺れる石垣市長選が3月11日、4月22日には沖縄市長選がある。9月には27市町村の議員が任期満了を迎え、11月に豊見城市長選、那覇市長選、県知事選と続く。政治決戦の年に翁長知事と「オール沖縄」にとって、この第1幕の勝利の意味は非常に大きい。
沖縄県にある11市のうち知事と歩調を合わせる市長はこれまで名護市長と那覇市長だけだ。他の9市長は「オール沖縄」に対抗して「チーム沖縄」と称し、自公政権と蜜月を演じてきた。「オール沖縄」は必勝を期した宜野湾市長選(16年1月)を落とし、宮古島市長選(17年1月)、うるま市長選(同4月)で連敗してきた。今回、「チーム沖縄」の一角を崩したことで今後の市長選にはずみをつけたいところだ。
●名護市長選は混とん
しかし、現職稲嶺進氏が3選を目指す名護市長選の情勢は混とんとしている。前回自主投票だった公明党は新人の支持に回った。民意を無視して護岸工事が進む辺野古の状況も市民の選択に影を落とす。自公の大物政治家らの水面下での動きも、これまで同様活発だ。名護市民は何度も苦悩の選択を迫られる。
今年は、新基地建設反対を軸にした反基地の沖縄の民意をあらためて固める好機である。しかし、その民意を平然と踏みにじる政権が5割近い支持率を保っているという現実がある。全国の地方選挙で沖縄の基地問題が争点になる状況にできない限り、沖縄の苦悩は続くのだろうか。(ジャーナリスト 米倉外昭)
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