経団連は1月16日、経営側の春闘交渉指針である経営労働政策特別委員会報告(経労委報告、2018年版)を発表した。安倍首相による異例の「3%賃上げ」要請に理解を示し、好業績の企業については一律ベアを含む月例賃金の改善を呼び掛けている。
報告は、首相の賃上げ要請を「社会的期待」と受け止め、収益に見合った前向きな検討を求めた。高収益が続く企業については「年収ベースの賃金引き上げを基本としながら、月例賃金や総合的な処遇改善への積極的な対応を求める」とした。ただ、連合の要求水準ベア2%程度については「極めてハードルが高い」とし、中小労組の要求目安「1万500円」にも水を差している。
「働き方改革」をめぐっては、長時間労働是正で見込まれる社員の収入減に言及。生産性向上分は、総額人件費を考慮しつつ社員の処遇改善につなげるべきとし、職場環境改善やベアなどへの活用を挙げた。
関連してパート・有期契約社員の処遇改善を「極めて重要」と踏み込んだ。正社員化の推進や、賃金・時給の引き上げ、一時金の支給・増額などを労使で協議すべきと指摘。「正社員との不合理な処遇格差の解消を徹底する必要がある」としている。
一方、政府に対しては、消費税10%への確実な増税や、社会保障制度の抜本改革、高度プロフェッショナル制度の導入と裁量労働制の適用拡大を含む労働基準法改正の早期成立、労働市場改革など、批判が強い政策の実現を求めている。
経団連は第2次安倍政権発足までは一律のベアは論外とし、総額人件費抑制を進めてきた。そのことが先進国で唯一賃金の低下をもたらし、デフレを長引かせていることへの反省は、「報告」には見られない。
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