欧州連合(EU)の最高裁にあたる欧州司法裁判所は12月20日、「ウーバーは運輸業」という最終判断を下した。「配車アプリを介して運転手と乗客をつなぐデジタルサービス」という同社の主張は退けられた。
原告は、バルセロナタクシー運転手協会(スペイン)。ウーバーは3年前、アプリを提供する情報通信会社として同市に進出。タクシー営業ライセンスを申請せずに、一般ドライバーが自家用車で客を運ぶウーバーポップを始めた。
同協会はこれを不公平競争だとして、商事裁判所に営業の差し止めを求めた。対するウーバーは、タクシー業よりも規制の緩い電子商取引に関するEU法令の適用を要求。このためバルセロナの裁判所は、欧州司法裁判所に判断を委ねていた。
●労働者性が今後の課題
判決は控訴できず、欧州全域に適用される。各国は今後、国内法規に基づき、ウーバーに代表されるライドシェアを運輸業として規制できる。
米国ニューヨーク市タクシーリムジン委員会のマシュー・ダウス元代表は「欧州には米国にない哲学がある。無許可のサービスにはブレーキをかける。安全と働く者の権利を優先させる内容だ」と評価した。
「民泊」のエアビーアンドビーなど、インターネットを使って仕事の受注やサービスを提供するシェアリングエコノミー全般にも、裁判の影響が及んでいくという見方が強い。
国際運輸労連(ITF)は判決を歓迎する一方、「運転手は請負でなく被雇用者と認定されて初めて完全勝利」という見解を示した。本裁判では争われなかった点であり、英国で現在裁判が続いている。
●運輸会社として再生を
ウーバーポップは欧州の多くの国ですでに違法と宣告され、公然と営業できないことは同社も認める。最近ではノルウェーやフィンランドから撤退し、スイスでもその方向だ。
だが取り締まりが緩いポーランドでは、運転手の罰金を肩代わりしたり、弁護士費用を負担して営業を続けている。ドイツでは、レンタカー会社と提携する新事業をミュンヘンで模索し、地元タクシー運転手の強い反発を受けた。
英国ではタクシーよりも規制の緩いプライベート・ハイヤー車(PHV)として登録しているが、ロンドンではその資格基準すら満たせていない。安全問題などを理由に、営業許可が取り消されたことは記憶に新しい。
鵺(ぬえ)のようなウーバーはこの先、運輸会社として欧州で関係法令にどう従っていくのか、注視が必要だ。「三流タクシー会社に甘んじることは、断じて許されない」(ITF)のだ。(国際運輸労連内陸運輸部会長 浦田誠)
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