1基1千億円といわれる陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入が12月19日、閣議決定された。北朝鮮のミサイルからの防衛が名目だが、軍事専門家からは「攻撃兵器では」という疑問が出されている。
イージス・アショアは飛来するミサイルを探知・追跡し、数十発の迎撃ミサイルを同時に発射できるシステム。2023年ごろまでに秋田県と山口県に1基ずつ計2基を配備する計画だ。
この日、議員会館で開かれた市民集会で軍事ジャーナリストの前田哲男氏は「イージス・アショアは防衛兵器ではない。発射容器にトマホーク(巡航ミサイル)を装填(そうてん)すれば、攻撃兵器に転用可能だ。配備により、敵基地攻撃能力を持つミサイル基地が完成する」と指摘した。米軍はルーマニアに配備済み。ポーランドにも配備予定だ。イランのミサイルからの防衛が目的とされるが、ロシアは「わが国への攻撃兵器だ」と激しく反発しているという。
集会でもう一つ指摘されたのが健康被害だ。強力なレーダーが周囲に強い電磁波を出す。元陸上自衛隊員の井筒高雄氏は「(同じ兵器が搭載された)イージス艦では、レーダー使用時に乗員が甲板に出てはいけないことになっている。強い電磁波を避けるためだ」と指摘。ところが、イージス・アショアの設置が検討されている秋田市の陸自新屋(あらや)演習場は周囲に住宅地が広がり、小中高校がある。
2基で2千億円、さらに装填するミサイルは1発30億円。11月の来日で安倍首相に兵器購入を迫ったトランプ米大統領へのビッグなクリスマスプレゼントになったのは間違いないが、国民の安全に寄与するのかは不透明だ。
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