衆参の憲法審査会や自民党憲法改正推進本部で改憲に関する論議が続いている。「立憲派」内にある改憲の動向を含め、現状をどう見るのか、憲法学者の清水雅彦日体大教授に見解を聞いた。
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――政府の改憲日程は?
清水 年内に改憲案を国会に提出するといっていたのが遅れている。三千万署名や(戦争法廃止を求める)「19日行動」など市民運動の成果だ。
――9条はどうなるか?
清水 首相は「戦力不保持」「交戦権否認」の第2項を残して、自衛隊の存在を憲法に明記するという。以前は第2項の削除や書き換えを主張していた。温存するのは公明党対策といわれている。衆院選後、議席を減らした公明党は改憲に慎重になっている。
●山尾氏の発言に危うさ
――注視すべき動きは?
清水 立憲会派の衆議院憲法審査会委員でもある山尾志桜里氏の最近の発言が気になる。最近、ウェブ雑誌のインタビューで「9条に個別的自衛権を明示すべき」と主張している。
かつて、自衛隊が行使できるのは「個別的自衛権のみ」と政府は解釈してきた。2014年に安倍首相は「行使できないとは書いていない」という理屈をつけて、集団的自衛権を閣議決定した。こうした言い訳を与えないために9条を変えるというのが山尾氏の主張だが、危うさを感じる。
――山尾氏は憲法裁判所の設立も提案している。
清水 憲法裁判所は、立法府が制定した法律を違憲かどうかなどを審査する機関。裁判官の選任にあたっては、時の政権を握る党がより人事に力をもつ。ドイツや韓国など政権交代が頻繁に行われる国ではうまく機能する。長年自民党政権が続く日本でこれが導入されたら、裁判官は保守的な思想の持ち主ばかりが選ばれ続けるだろう。問題のある法律を市民が違憲と訴えても、一発で「合憲」と判断されてしまう。
●不十分な国民投票法
――国民投票についてはどうか?
清水 改憲発議から最低60日で行える点や、投票期日の14日前まで無制限に広告を出せる点などが問題。
改憲勢力としては、初めての改憲は絶対失敗したくないはずだ。そのため、国会発議に向け、改憲案に「戦力不保持」の2項を残す苦渋の決断をした。「ここまでハードルを下げた改憲案を、絶対否決させない」と大々的にキャンペーンをしてくるだろう。財界がバックにつけば、資金面で劣る護憲派市民の闘いは大変苦しくなる。発議こそ絶対に止める決意で運動をしていかなければならない。
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