中堅中小の金属関係労組でつくるJAMは12月3、4の両日、滋賀県内で春闘討論集会を開き、全ての組合が35歳・30万5千円(勤続17年)などの水準をめざす個別賃金と、従来型の平均賃上げ方式で1万500円以上(賃金改善分6000円)の要求基準を提案した。公正な取引を通じ製品と労働の適正な評価を求める「価値を認め合う社会」と、社会的にふさわしい賃金水準を求める個別賃金の取り組みが、闘争の2本柱として提起された。
方針大綱は年齢や勤続、職種などの銘柄について到達すべき賃金水準を目指す個別賃金の取り組みを今年も重視。世間水準を意識した交渉を行える点で、格差是正に効果的とされる。
17闘争では、目指すべき水準を個別賃金の額で要求し、回答を得た組合のベア・賃金改善額の平均は2千円強。賃金の上げ幅を要求する従来方式より約千円高いという結果が示された。JAMとしてはこの要求・回答方式をさらに広めたい考えだ。
全組合が目指すべき到達水準は昨年同様、高卒後入職者で30歳・26万円、35歳・30万5千円に設定した。この水準とのかい離が大きい組合については、必ず到達すべき水準として35歳・27万円などの一人前ミニマム基準も設定した。
●不当事例、後を絶たず
「価値を認め合う社会」の取り組みは2年目を迎える。下請けなどサプライチェーン(製品の供給網)への付加価値の適正配分を掲げる連合の方針とも軌を一にしている。
値戻し(価格引き上げ)を含む取引条件の見直しや、原材料価格、労務費の価格への転嫁の検討などを自社に要請する。17闘争では634組合が取り組み、経営側からもおおむね理解を得られたという。
討論では、納入先の完成品メーカーから不当な値引き圧力を受けている中小企業の生々しい実態が報告され、完成品メーカー労組が加入する他産別に連携、協力を呼び掛けてほしいとの要望が出された。
安河内賢弘会長はあいさつで、後継者難による中小企業の廃業が急増し、このままでは2025年に650万人もの雇用が失われるとの試算を紹介。「(後継者を確保するためにも)中小企業がしっかり利益を出せるようにしなければならない。中小企業で働く労働者は全体の7割。『(中小企業の経営を守り労働条件を向上させる)中小労働運動を労働運動のど真ん中に据える』ということには経済的合理性がある」と強調し、次のように語った。
「高い技術を持つ中小企業がつぶれて困るのは大企業。日本のものづくりの品質と信頼を根底から支えているのは中小企業だという価値観を日本全体に根付かせることが『価値を認め合う社会』だ。社会的貢献にふさわしい賃金を獲得する個別賃金の取り組みと併せ、この2つの課題を大きな柱に据えて闘おう」
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