連合は11月28日、パワーハラスメントゼロを目指すシンポジウムを都内で開いた。職場のハラスメント問題を扱う研究者、弁護士、労組役員が登壇。実態に基づいて問題点を整理し、労働組合の役割を含めた今後の課題について討論した。
●健康被害防ごう
職場のいじめ・嫌がらせを要因とした精神障害の労災認定は増加傾向にあり、過労自死は後を絶たない。働き方改革実行計画では、長時間労働是正の対策の一つとして、メンタルヘルス対策とパワーハラスメント防止対策の取り組み強化を掲げた。これを受けて厚労省は職場のパワーハラスメント防止対策検討委員会を5月に設置。今年度内には報告が出る見通しだ。
労働政策研究・研修機構(JILPT)労使関係部門の内藤忍副主任研究員がハラスメントの現状と課題について講演した。ハラスメントの要因は、競争主義、人員削減によるゆとりのない職場環境など複合的だと指摘。「ハラスメントは取り返しのつかない健康被害を生む。労使ともに職場のいじめを個別労働者の問題と捉え、職場環境の深刻な問題と考えていないように感じる。この点を自覚して予防に取り組むことが大事」と述べた。
対策については「ハラスメントの理由や背景を掘り下げ、定期的に労使で協議の場を設けて予防に生かす。併せて全従業員にアンケート調査を行い、問題点を洗い出すことも必要」と促した。成田赤十字病院(千葉県)の衛生委員会の事例を紹介。労組主導でハラスメントを委員会の議題に盛り込み、調査活動、対策検討、進捗(しんちょく)状況を共有しているという。
海外ではハラスメントの予防に重点を置いた法制度が整っている国が多いとして、日本での立法化に触れ「法的な事前予防策を導入することが重要だ。将来は禁止規定が必要だろう。裁判は労働者にとってハードルが高く、補償水準も低い。事後救済策の改善も喫緊の課題」と強調した。
連合の村上陽子総合労働局長は「パワハラで一度傷つくとなかなか癒えず、職を失うこともある。連合が掲げる『パワーハラスメントゼロ』は決して誇張ではない。これから社会に出る若い人たちにとって必要だという思いが込められている」と述べた。連合は、救済措置の強化、労働安全衛生での労組のチェック機能発揮を求めている。
●社風への切り込みも
ディスカッションでは新村響子弁護士が労組の取り組みは不十分と指摘した。「真剣に相談システムを作り、周知すべきだ。いじめに該当するかどうか、グレーゾーンであっても何かが起きていることに違いはない。相談には迅速に対応すること。相談者は(労組が)人事部と通じているのではと思っているので、守秘義務を果たすというアピールも必要だ」と述べた。
職場環境については「ノルマや納期順守、体育会系の風土など、根本的な改善に厳しく切り込むべき。人事担当者の研修など体制整備も労組がチェックする必要がある」と呼びかけた。
立法化については「(自身が事務局次長を務める)日本労働弁護団で立法提言を作りたいと考えている。シンプルな禁止規定で独立した法として作られるのが理想だが、労働安全衛生法に措置義務を入れるのが現実的だ」と語った。
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