UAゼンセンは11月16日、顧客からの悪質クレーム(迷惑行為)について、流通産業で働く組合員5万人超から回答を得た調査結果(速報版)を発表した。7割超が被害に遭ったことがあるとし、そのうち5割が強いストレスを感じていると答えるなど深刻な実態が明らかになった。同日、悪質クレームから労働者を守るための対策や実態調査、研究を国に要請した。
調査は、UAゼンセン流通部門が6~7月に行った。168組合、5万878人から回答があった。
悪質クレームを「要求内容、要求態度が社会通念に照らして著しく不相当であるクレーム(苦情)」と定義。欠陥があった商品よりも高額な賠償、土下座、従業員の解雇を求めるなどの行き過ぎた要求や、店員に対する長時間の拘束、暴言、暴力などの問題行動を類型化している。
調査では回答者の74%が悪質クレームを受けたことがあると回答。そのうち9割がストレスを感じたとし、53%が「強いストレス」を訴えている。対応方法については「謝り続けた」が38%で最多。問題行為が収まらなかったり、エスカレートしたなどの合計が3割に上るなど、解決の難しさが示された。こうした迷惑行為が近年増えているとの回答は5割にも上る。
自由記述欄に約2万人が記載するなど、この問題への組合員の関心は高い。速報版では「ぶっ殺すぞ!と怒鳴られた」「土下座での謝罪を要求された」などの深刻な事例が紹介されている(表)。
UAゼンセンは同日、厚労相宛てに(1)労働者を守るために事業者が講ずべき措置の策定(2)実態調査・研究の実施(3)抑止する施策――を要請。調査結果と2万4千筆の署名、246組合の決議も添えた。
西尾多聞・流通部門事務局長は「流通・サービス業は、顧客の意見を受け止めながらより良いサービスを行うことが大切だが、度を越した行為が増えている。サービスを提供する側と受け手が互いに尊重される社会をつくる運動を提起したい」と語る。
8月には、悪質クレームの判断基準や、企業による啓蒙・教育、対応方法などを示したガイドラインを策定。業界労使での解決も同時に目指している。
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