配車アプリを使った擬似タクシー運営や宅配事業、インターネット上で仕事を紹介・提供するクラウド・ワーキング・サービスなど、「プラットフォームエコノミー」(※)が世界で広がりつつある。欧州労連(ETUC)はこうした事業が雇用や労働条件、労働市場に与える影響を軽視できないとして10月26日、執行委員会決議を採択した。「公正なデジタル社会」の実現に向け何らかの規制が必要と指摘し、使用者を含む関係者との協議を求めている。
●ECは規制に後ろ向き
情報技術(IT)を活用した新サービスについては雇用創出やワーク・ライフ・バランスが期待できるといった見解がある一方で、ETUCはマイナス面をしっかり見る必要があると強調する。公共サービスを含む業務のアウトソーシングによる雇用の劣化、企業責任の希薄化、個人事業主化に伴う労働法のすり抜けなどである。
欧州議会なども懸念を表明し、現行の派遣労働指令の適用が可能かどうかを検討すべきとのリポートを公表している。
ETUCはこのリポートを支持しつつ、どのレベルでどんな規制をすべきかを協議しなければならないと指摘。そのための調査を欧州連合の執行機関である欧州委員会(EC)に求めているが、反応が鈍いと憤る。
●企業への課税強化も
欧州委員会が動かなくても、まず欧州レベルで関係者が協議すべきというのがETUCのスタンス。来年1月28日には、プラットフォーム企業を含めた会合が予定されており、そこでの議論も踏まえて新たな政策的枠組みを展望したい考えだ。それとは別に、ウーバーとの闘いなど、各国の労働組合によるさまざまな取り組みの経験も交流することにしている。
一方、各国政府に対しては、現状でもできることがあるとして、13項目の要望を示している(表)。
ETUCの決議によれば、基本的スタンスは情報開示、労働者の参加、協議、交渉の権利を保障すること。それをどう具体化していくかが課題だという。政策的な提起の中には、プラットフォーム企業への課税強化や欧州デジタル省設置なども含まれている。
※プラットフォームエコノミー プラットフォームは土台、場所のこと。インターネット上で場所を提供し、事業を展開する形態を指します。例えば「楽天市場」。楽天は商品も実際の商店も保有していませんが、この「市場」に売り手と買い手を呼び込んで売買を成立させるやり方です。ウーバー社も、自家用車を保有する人と乗車したい人をアプリ上でマッチングさせるサービスを展開しています。国連開発計画(UNDP)は、こうしたプラットフォームを通じて今後3年以内に世界で10億人以上が労働市場に参入するとの試算を公表しています。
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