雇用されない働き方についての検討が厚生労働省内で始まっている。非雇用型のテレワークや、インターネットを介して仕事を受注するクラウドソーシングなど、請負契約で働く人への保護を検討するという。ただ、労働法上の労働者として保護しようという視点は乏しい。
「雇用類似の働き方に関する検討会」の初会合が10月24日、開かれた。働き方改革実行計画を踏まえたもので、発注者と請負契約を結ぶ働き手について、法的保護の必要性を検討するという。
会合では、経済産業省政策局の参事官が出席し、同省が昨年まとめた「雇用関係によらない働き方に関する研究会」の検討結果を報告した。「第4次産業革命」の進展により、企業に属さない個人事業主的な働き手が増えるとの見通しを示し、病気や育児での休業、受注悪化時の公的支援などの就労環境整備、教育訓練、取引の改善などを将来の検討課題に挙げた。
会合では「まずは既存の労働法に類似した保護を検討すべき。労働条件規制、契約関係の存続保障、災害補償、集団的労働関係を含む保護だ」(川田琢之筑波大学教授)との意見も出たが、これは少数。「働き方のタイプごとに(規制を)整理すべきだが、あまり企業に負荷がかかるようだと人材活用は進まない。シンプルで分かりやすいフレームが必要」(クラウドソーシング協会の湯田健一郎事務局長)など、事業上の都合を強調する意見が多い。
今後、関係者への聞き取りを始める。建設や運送関係、演奏家、在宅ワークなど、労働者性が問題になる職業が候補に上がった。
●働き過ぎ対策は不明
テレワークの新たなガイドライン策定や、副業・兼業の解禁に向けたルールづくりを検討する「柔軟な働き方に関する検討会」も10月初旬に始まった。これも働き方改革実行計画に基づくもので、「子育て、介護と仕事の両立」「多様な人材の能力発揮」などの利点を挙げている。
最も問題が大きいといわれているのは非雇用型テレワーク。発注者とのトラブルが多く、泣き寝入りの比率が高い。検討会では近年急増中のクラウドソーシングについて、仲介手数料の明示などのルールを策定するという。
企業が副業・兼業を禁止・制限できないルールを検討。働き過ぎを防ぐための労働時間管理も検討課題だが、明確な方向性は示されていない。
この検討会でも、昨年、副業・兼業の活用について報告をまとめた経済産業省の職員が出席している。
●議論乱すとっぴな意見
中長期的な課題や、旧来の労使の枠組みに当てはまらない課題を検討するとした労働政策審議会基本部会の第2回会合が10月、開かれた。何を審議するかを検討している段階だが、ここでも、テレワークや雇用類似の働き方など「時間・空間・企業に縛られない働き方」が検討の柱とされている。
同部会は、自民党の要望を発端とした労政審「改革」の一環で設置された。公益・労使による3者構成ではなく、学者や経営者、労組OBなどの有識者が占める。
第2回会合では、まだ審議項目さえ決まっていないのに「制度改正につながる具体的な議論を。イノベーティブ(刷新的)に働く上で足かせになるような法令があればそれをどう改正するかだ」(佐々木かをり・イー・ウーマン社長)などと、初回に続き、規制緩和を求めるとっぴで性急な主張が目立った。
人工知能(AI)など技術革新の労働への影響、生産性向上の取り組みを含め、月1回のペースで検討し、来夏に報告書をまとめるという。
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