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    時の問題/「富裕層増税」は本気か?/IMFがリポートを公表

     国際通貨基金(IMF)が10月11日に公表した「財政モニター」という名のリポートが話題になっています。IMFはこれまで各国に対し、大企業や高所得層を優遇し、財政赤字国には公共サービスの切り捨てを迫る政策を推進してきました。ところがリポートは「富裕層増税」や「教育・医療への支出拡大」を打ち出したのです。従来の路線を転換したのでしょうか。

     リポートは「不平等問題への取り組み」を柱に掲げました。格差や貧困を放置していては、経済成長は望めないと指摘。富の再配分が必要だと述べ、具体的には(1)最高税率の引き上げと所得の移転(2)全国民向けのベーシックインカム(最低生活保障)導入(3)教育と医療への公共支出増加――を提起しています。

     経済開発協力機構(OECD)内では、所得税の最高税率が平均62%(1981年)から、35%(2015年)へ低下してきたことを紹介。それに見合う成長が確認できないにもかかわらず、国民の一体性が失われて二極化が進行するなど弊害が目立つと分析しています。

     とりわけ先進国の富裕層に対しては最高税率を引き上げる余地があり、利子やキャピタルゲインへの課税強化も提起しています。

     

    ●「疑わしい」との声も

     

     一方、貧困克服を掲げて活動している国際団体オックスファムは、IMFリポートを歓迎しつつも「まだ信用できない」と厳しい見方を示しています。

     それは、IMF自身が各国に公共サービスの民営化や削減を押し付けたにもかかわらず、格差や貧困を広げた「財政調整措置」への反省や言及がないため。具体的な政策提起も不十分だとして、疑いを解いていません。