「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    高収入の若者が飲酒時に使う?/米国ライドシェア利用者調査/日本での必要性吟味を

     「高学歴高収入で若い一部の層が酒を飲む時に利用する」。米カリフォルニア大学デービス校の研究機関が発表したライドシェアに関する報告書からはそんな利用者像が浮かび上がる。

     アプリを介して運転手と乗客を結ぶライドシェアは、最大手で起業7年目のウーバー社が24カ国で実車50億回を突破したと宣伝するなど、急成長中だ。同時に素人ドライバーが自家用車を使うことから、世界各地でタクシー業界やプロの運転手たちと対立してきた。ライセンスを取得して営業していた英ロンドンでも「乗客の安全対策が不十分」などの理由で、9月に更新申請が却下されている。

     

    ●7割は使ったことなし

     

     今月発表された報告書は、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴなど七つの大都市圏で実施したアンケート調査に基づく。18歳以上の成人4094人が回答した。内訳は、都市部の居住者が2217人で、郊外に住む人が1877人だった。調査期間は、2014年9月~翌年3月と15年8月~翌年1月の2回。

     読んでまず驚くのは、ライドシェアを「知っているが使ったことがない人」が全体の6割を占めたこと。「知らない人」がさらに1割いた。利用頻度は「月1回以下」が最も多く34%。続いて「月1回から数回」が合わせて41%。「毎日使う」はわずか6%だった。このうち、都市部の回答者29%が「利用している」と答えたのに対し、郊外での利用率は7%に過ぎなかった。

     利用者を年齢別に分けると、「18~29歳」が36%でトップを占める一方、「65歳以上」は4%。学歴では「大学院卒」が28%で最も多く、「大卒」の25%がこれに続く。年収はなんと「7万5千ドル(約855万円)以上」が58%を占めた。「3万5千ドル(約399万円)未満」はわずか15%。米国労働省統計局によれば、平均年収は4万3556ドルである。

     

    ●便利さだけでいいか?

     

     使う目的では、38%が「バーやパーティー」と答え、「レストランやカフェ」も含めると6割を超える。さらに「飲酒運転しないため」が都市部でも郊外でも回答の3割強を占めた。「自家用車の駐車場所が確保しづらい」や「駐車料金が高すぎる」が都市部のトップ回答で37%だった。

     報告書は、ライドシェア利用者の5、6割は、徒歩、自転車、公共交通で代替できたと指摘する。マイカーを処分した人が回答者の9%いたことや公共交通の利用が微減していることにも触れている。

     この調査結果に、ライドシェアの運転手たちが最低賃金さえ稼げない実態やタクシー運転手の収入が激減している各国での事情を重ねると、いったい誰のため・何のためのライドシェアなのか、と憤然たる思いになる。

     こんなサービスが果たして日本に必要か? 便利さ・快適さを追求する前に考えることがあるだろう。(浦田誠・国際運輸労連内陸運輸部会長)