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    仕事に見合った賃金支給を/非常勤処遇で上尾市職労/「職務実態レポート」で追及

     「非正規職員に対して仕事に見合った賃金を支払うべきだ」と、上尾市職労(自治労連埼玉県本部加盟)が取り組みを進めている。仕事の困難さや責任の重さを当局に分かってもらおうと、今年8月には「職務の実態レポート」を作成した。その上で「正規職員並みの職務にふさわしい賃金が必要」と訴えている。

     

    ●職務は複雑・多様化

     

     レポートでは、市民課と保険年金課の窓口職員、市民活動支援センターの市民活動推進協力員の仕事の実態を紹介している。当事者が執筆を担当したという。

     市民課窓口では戸籍、住民基本台帳、印鑑登録などの業務を行っている。ある職員は「家庭内暴力(DV)が増え続けていて、夫に住所を知られないようにしなければなりません。外国人への対応では、アジアの人が多かった10年前とは様変わり。いろんな国の人がいて、扱う書類も国によってさまざま」と語る。

     単に住民票を交付する業務ではなくなり、複雑・多様化しているのだ。

     

    ●外国人増加も背景に

     

     例えばこんなケースだ。中国人の女性2人が来所し、都内に住む娘を上尾市の小学校に通わせたいという相談を受けた。女性2人は娘の母と祖母で、県内の別の市に住民登録をしている。母は離婚しており、娘は元夫の母(父方祖母)の家に住んでいる。

     娘の住民登録をするには住民基本台帳法、戸籍法、児童福祉法、入管法などの知識が求められる。住民異動に必要な娘の親権がどうなっているのか、父親(元夫)の同意が取れるのか、そもそも在留資格があるのか――それらを適切に判断しなくてはならない。

     戸籍に関しては「今度再婚するが、子は元夫の戸籍のまま。どうしたらいいですか」「今妊娠していて、いずれ結婚しようと思っているが、詳しくは決まっていない。前の夫との間にいる中学生は『名字は変わりたくない』と言っている。どうしたらいいですか」といった、すぐには回答しにくい相談を受けることがしばしばだ。

     非常勤職員は「正職員と違って私たちには研修もありません。職場にある本や資料で調べたり、聞いて回ったりしてなんとか対応しています」。

     正職員は5、6年で異動になるため、結局、非常勤職員の方が専門性も経験も豊かになっていくという。

     

    ●正規賃金の40%レベル

     

     組合によれば、非常勤職員の賃金は月16日勤務の場合で約14万円。一時金を含めた12年間の賃金総額は、正職員の4670万円に対し、非常勤職員は1912万円。約40%の水準だ。

     組合の西口哲之書記長は「このレポートを当局に説明したところ、『非常勤の皆さんの働きぶりに甘えていたことを反省する』と言った。ではどうするのかを今後迫っていきたい」と語っている。

     

    ●改正地公法にも対応

     

     改正地方公務員法への対応として自治労連は今、非正規職員が現在どんな仕事をしているのかを調べ、それにふさわしい雇用(任用)・処遇にしようという取り組みを進めている。

     上尾市職労のレポートはそのモデルとしても注目されている。西口書記長は「正職員並みの職務をこなしているなら本来は正規化すべきだが、毎日の勤務までは望まないという声も聞く。期間の定めのない短時間正職員を目指すべきではないか」と語っている。