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    〈解説〉もうけ優先の「働き方改革」/法案要綱審議終わる/働き手確保、生産性向上が目的

     働き方改革推進関連法案をめぐる労働政策審議会の審議が終了した。長時間労働対策や、非正規労働者の処遇で一定の改善がある一方、労働者保護規制に大穴を開ける規制緩和を抱き合わせにしている。仮に今回、衆議院が解散しても、労政審で「おおむね妥当」とされた以上、その後の国会への提案は必至。

     法案は労働基準法や労働契約法など8本の法改正を一括法案とする(表)。

     最も警戒すべきは、高度プロフェッショナル制度の創設と、企画業務型裁量労働制の特定の営業職への適用拡大だ。過大なノルマを課され業務量が増えれば、際限のない長時間労働を招きかねず、残業代も支払われない。

     次に注意が必要なのが、雇用対策法の見直し。雇用対策に関する基本法で、国の政策の方向性を定めている。法の目的に「生産性の向上」を、国の講ずべき措置に「多様な就業形態の普及」を盛り込んだ。人減らしによる生産性向上の促進や、労働者保護規制を受けない非雇用型の働き手の増加が懸念される。

     罰則付き残業上限規制の新設は、労基法制定以来初めてだが、過労死認定基準の水準であることや、健康に密接に関わる1日単位の規制がないことに批判が強い。建設・運輸など最も長時間労働が深刻な業種への適用が猶予されていることへの不満も根強くある。

     政府の「同一労働同一賃金ガイドライン案」の法制化では、一時金や通勤費などの諸手当、福利厚生は改善に向かうが、基本給では雇用管理区分の違いによる格差が温存されるなど、効果は乏しいとみられる。

     規制緩和と、不十分な規制強化とを同時に行う「働き方改革」について、上西充子法政大学教授は、働き手の確保と生産性の向上という、二つの目的があると指摘する。育児や介護を担う女性や、病気や障害などさまざまな事情がある人に少しでも多く働いてもらおうという狙いと、それとは別に、休みなしで働く高プロ制や裁量労働の適用対象を増やし、経済のために働かせる狙いがあるとの指摘だ。

     かつて安倍首相は「世界で一番企業が活躍しやすい国」にするために、労働者保護ルールなどの岩盤規制を破壊するドリルの刃になると豪語した。企業のもうけ優先の「働き方改革」に対し、働く者の暮らしのための改革を求める声を強めていく必要がある。