「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    重大災害根絶と組織力強化へ/基幹労連大会/神田・弥久末体制を確立

     鉄鋼、造船・総合重工、非鉄金属の製造業労組などでつくる基幹労連(26万1千人)は9月7、8の両日、大阪市内で定期大会を開き、多発する重大災害の根絶と、組織力の強化を目指す運動方針を採択した。多様な人材の活躍(ダイバーシティ)を重視するなどの産業・労働政策中期ビジョンの改定版も策定。工藤智司委員長が勇退し、新委員長には神田健一前事務局長を、新事務局長には弥久末顕前事務局次長を選出した。

     方針の第一の柱は、重大災害の根絶だ。組合のある職場では、産別結成以降の14年間で330人超、毎年20人前後の死亡災害が起きている。この傾向に歯止めをかけようと、災害データをまとめた電子資料を各組織に配布し、教訓の共有を図る。

     第二が産別としての政策実現力の再構築。2013年に現職の組織内参議院議員を失い、16年の選挙でも得票数が組合員数の4割程度にとどまり、失地回復には至らなかった。今後、22年の参院選に候補を擁立する方向で検討し、力を蓄えるとしている。

     組織の強化・拡大も重視する。次代の組合の担い手づくりのため、4泊5日の役員研修をはじめ、各種セミナーを行う。特に経費節減で削減されてきた中小労組の教育機能を強化する方針だ。

     代議員からは「今後役員の世代交代が急速に進む。10年後を見越した人材育成が最重要課題だ」(新日鉄住金)、「中堅層を対象にした交流が必要ではないか。職場の生産性、安全性にもつながる」(愛知製鋼)、「自前の教育が困難な組織で一人でも多くの役員の教育が必要」(新日鉄住金)などの意見が出された。

     神田事務局長は、人材育成や組織内議員の重要性を強調した上で、「かつて、労災の遺族の方から『会社にとっては1万人分の1人かもしれないが、家族にとっては全てだった』と言われたことがある。(組合員を見る目が)26万人分の1人になっていないか。仲間の命は基幹労連の全てだ」と述べ、組織と運動の点検を求めた。

     

    ●「産業の死活問題」

     

     10年後を望む「産業・労働政策中期ビジョン」の改定も確認した。労働力人口が減少する中、年齢や性別、障害の有無、国籍にかかわらず働けるダイバーシティを促す制度・職場環境の整備を掲げている。

     中期ビジョンは「長期安定雇用の維持が大原則」と強調。総実労働時間1800時間台の実現を目指すことや、休息時間確保の考え方を浸透させること、定年65歳への延長の検討、同一価値労働同一賃金の観点からの非正規労働者の処遇の検証・改善――などを盛り込んでいる。

     産業政策では「10年後も『ものづくり産業』が日本を支える」と展望し、(1)技術開発と技術・技能の継承(2)優秀な人材の確保と育成(3)主要拠点となる国内マザー工場の維持・強化による世界最高水準の技術力の継承・発展――が必要と指摘。そのためには、国内中心の生産活動、低廉で安定な電力供給が不可欠などとする基本的考え方を示している。

     討論では、停止中の原子力発電所の早期再稼働を求める意見が、電力を多く消費する鉄鋼、非鉄関連の業種から出されたほか、協力国会議員を通じた政策実現力の強化を求める意見も複数あった。