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    格差解消へ取り組み始まる・上/各地の地方最賃審/新潟、沖縄、宮崎、鳥取

     地域別最低賃金の改定審議で、今年もさまざまな取り組みが展開された。中央最賃審(中賃)の引き上げ目安を上積みしたのは4県。そのうち、新潟では地方連合会が全市町村に最賃引き上げでの国への要請を求め、5市長が応じた。地域間格差や人手不足の解消で合意づくりの努力が行われている。

     

    ●全自治体を訪問/目安1円プラスの新潟

     

     2017年度の地域別最賃の平均引き上げ額は25円。新潟、鳥取、宮崎、沖縄の4県で中賃の引き上げ目安を上回った。

     目安1円プラスの25円引き上げを答申した新潟(778円)では今年、柏崎、長岡、三条、見附、加茂の5市の市長が新潟労働局長に対し、最賃の引き上げを要請した。内容は(1)地域間格差が広がらないように最賃を引き上げること(2)「できる限り早期に全国最低800円、20年までに全国平均1000円に引き上げ」などの政労使合意に配意した決定を行うこと(3)最賃違反への監督体制強化と中小企業支援制度の周知――の3点(表)。

     連合新潟と各地域協議会が今年初めて、県下全市町村に要請書のひな形を持って訪問、あるいは郵送し、5市長が応じた形だ。長岡市商工部産業政策課の担当者は「地域間格差が広がると人材を確保できないという問題があり、賛同した」と話す。

     新潟市は、地域別最賃が市内都市部の生活保護費に近いか下回ると指摘し、特段の配慮を求める要請を、2010年から労働局に毎年行っている。

     改定審議では、使用者側が目安通りの改定にさえ反対する中、労働側が「新潟は北陸で最も低く、関東と比べても相当に低い。このままでは人口が流出してしまう」と主張。労動側委員で連合新潟の諸橋幸太郎副事務局長は、地域間格差の指摘が公益委員に響いたのではないかとみる。

     自治体首長要請の手応えについて、「訪問先では『最賃って何?』という感じだった。もちろん言葉では知っているが、説明すると『新潟県はこんなに低いのか』『地域間の差があり過ぎる』と驚かれる。実態があまり知られていない。来年も続けたい」と話す。

     

    ●沖縄がけん引役に/宮崎、鳥取も目安超え

     

     他の3県のうち、けん引役となったのが、8月4日と早い時期に答申を出した沖縄だ。1円プラスの23円引き上げ、737円となった。

     労動側委員の松田原昌輝連合沖縄副事務局長は「沖縄の好景気はバブル期をしのぐ勢いで、有効求人倍率も1倍を超え過去最高。人手不足の解消や貧困問題の解決という社会的要請も強まっている。『その沖縄が一番低くていいというメッセージは送れない』という認識が公益委員にあった」とみる。

     労動側は募集賃金の平均時給が800円台半ばという民間求人誌を資料として最賃審に提出。使用者側が常とう句とする支払い能力論を封じた。

     沖縄の動きを見て目安に上積みしたのが宮崎だ。答申は沖縄から6日後の10日。審議会の苦渋が見て取れる。目安通りだと単独で全国最下位となること、有効求人倍率は過去最高の約1・4倍であることなどが勘案され、1円上積みとなった(737円)。

     連合宮崎の中川育江事務局長は「宮崎は(経済状況が)沖縄とは全く逆。肌感覚でも那覇空港と宮崎空港では(人、物の流れが)違う。中小零細企業が多く、企業倒産も全国2番目に多い。非常に経営が厳しい」と語る。

     鳥取は10日に答申した。こちらも沖縄の勢いを受けた形だ。使用者側は目安を大幅に下回る改定を求め、労動側は近県への人口流出の防止を主張。目安を1円上積みし(738円)、最下位を回避した。

     鳥取では昨年、公益委員2人が目安に上積みする専門部会の決定に「高い」として反対する異例の事態が生じたが、今年はその2人の委員のうち1人が交代。混乱なく決着している。(つづく)